オバマの一般教書演説は1時間に及ぶ長いものだった。久しぶりに中継を最初から最後まで見たが、オバマらしい華麗で雄渾な弁論術が冴え、2年前の興奮を思い起こさせる中身だった。中盤からはやや退屈になったが、前半と終盤は聴衆を引きつけるオバマ節の世界で、米国人に米国の理念を訴えて迫り、ぐいぐいと感動を盛り上げていく。テーマは米国の競争力と教育で、オバマらしい哲学と表現が満載された演説だった。目線が一般市民のところにあり、米国の普通の市民感覚に内在している。演説の中で具体的に米国の市民を取り上げ、努力し挑戦する姿を全国民に紹介していた。米国の理念が、厳しい環境の中でも、名も無い市民の日常で生きていることを証明し説得する。素晴らしい。官僚が書く日本の首相の施政方針演説とは雲泥の差。中国とインドの技術と教育に注目し、数学と科学の教育の重要性を訴え、優秀な教師を集めなければならないと言い、テレビを見ている若者は教師になることを志望してくれと呼びかけていた。この言葉は、日本の指導者に日本の国民に向かって言って欲しいものだ。もし米国のテレビが、ニコ動のように画面にツイートを流せたなら、「日本が駄目になったのは、ゆとり教育をやったからだよ」と書きこんでやりたかった。しかしながら、演説は素晴らしかったが、共和党の「小さな政府」に妥協した政策の中身については首を捻る。例えば、5年間の財政支出の凍結など、公約して実行できるとは到底思えない。