外信が伝える平壌の報道を見ていると、多数の人々が金日成広場の人民大学習堂前や万寿台の丘に集まり、金正日の死を悼んでいる写真が並んでいる。気づくのは、特に女性の防寒着の色がカラフルになり、以前よりも上質に変わった印象が漂うことだ。材質もデザインもよくなっている。靴も。7年前、米国が北朝鮮の核開発疑惑に対して脅しをかけ、イラクとの「二正面作戦」を構えたとき、極寒の中、核戦争の危機を伴う凄絶な瀬戸際外交のチキンゲームが始まった。あれも年末だったが、人々が動員されて反米集会で拳を突き上げる映像がよく紹介された。あのとき、人々の服装は男女とも真っ黒で、文革時の中国と同じ人民服の集団の塊であり、何も個性がなかったが、今回は少し様子が変わっている。特に若い女性の表情と装いに個性の萌芽がある。丹東の領事館に花輪を持って詰めかけている女性の姿などは、ほとんど現在の中国人一般の風情と変わらず、飢餓と貧窮に喘ぐ「北朝鮮人民」の面影がない。遼寧省や吉林省の経済成長と繁栄が国境の川を超えて波及し、北朝鮮領内にトリクルダウンされているのだろうか。とすれば、それは喜ばしい現象だ。が、それと同時に、あの北朝鮮の内部にさえも、どうやら格差が忍び寄っている。単なる個性の相違ではなく、豊かな者と貧しい者の差異が写真の中に看取できる。