関西電力の今夏の電力需給の問題について、ネットの議論は、ピーク時の不足時間の周辺に
関心が集中している。関電の原発を停止したとき、昨夏と較べて5日間19時間、猛暑の一昨年夏と較べて13日71時間、この間だけが供給不足になるのであり、ピーク・マネジメントで対策が可能だという言説だ。飯田哲也らが議論を主導している。当分、この問題で論議が続くことだろう。だが、肝心な点が忘れられている。それは、関電の-19.3%という数字が議論の前提として一人歩きしていることだ。関電だけ単独で捉えれば、一昨年比-19.3%になるが、60Hz帯の中西日本全体ではこの数字にはならない。政府(国家戦略室)が昨年7月に
発表した数字では、中西日本の電力不足は-8.3%となっている。この数字が議論の基本になるべきものだ。関電単独の-19.3%を前提にして、不足時間を割り出したり、ピーク・マネジメント対策を論じるのは、そもそも出発点が間違っているのではないか。電力会社からの融通分をゼロと仮定した試算であり、現実的には何の有意味性もない架空の議論だ。昨年11月の
政府資料には電力会社別のブレイクダウンが示されている。関西電力は-19.3%だが、中国電力は+2.7%、中部電力も+1.5%となっていて、この2社が全体をカバーすることで中西日本の不足が-8.3%となる。再稼働を論議するときは、中西日本の数字を使う必要がある。