「一票の格差」をめぐる各地の高裁の違憲判決のニュースを見ていると、いつも同じ絵が登場する。原告の弁護士グループが、勝訴した後、同じ図柄の紙を持ってマスコミの前に立ち、カメラにそれを撮らせている場面である。白地に黒字で「違憲判断」と大書され、その左下に「人口比例選挙 国民主権国家 ○」、右下に「非人口比例選挙 国会議員主権国家 X」と書かれている。同じフォーマットだ。この訴訟のトレードマークとして、マスコミ報道ですっかり定着した絵柄になった。これを見ると、各地の「一票の格差」をめぐる訴訟が、地域で独自に提起されたものではなく、全国一律に組織的に行われた運動であることが分かる。裁判所に提訴した原告は地元の弁護士だが、升永英俊と伊藤真の「一人一票実現国民会議」の運動の活動家たちだ。この訴訟と運動は、決して選挙区の有権者が自らの意思で起こしたものではない。選挙区の住民が投票権の不公平に怒り、一票の権利平等と全き民主主義を求めて立ち上がった運動ではない。例えば、現行の選挙制度を自身への差別として憤慨した市民が、官邸前で抗議デモを始め、それが訴訟に発展したという性格のものではない。弁護士グループによるところの、まさしく上からの運動だ。その点、昨夜(3/27)のテレビ報道で大きな話題になったような、成年後見制度のために障害者が選挙権を奪われたという問題とは全く違う。