北朝鮮がミサイル実験で打ち上げた「人工衛星」は、北朝鮮の発表では、地球を周回する軌道に順調に乗り、金正恩を讃える歌を宇宙から平壌市民に送り続けていることになっている。ネット情報で調べると、2012年12月に銀河3号で打ち上げた光明星3号2号機だけは、どうやら物体としては軌道投入に成功したらしいのだが、北朝鮮が発表しているところの「気象観測」や「資源探査」について、地上に電波情報を送信している形跡はなく、その人工衛星としての機能や成果は確認されていない。しかし、北朝鮮政府と北朝鮮科学院においては、この「人工衛星」打ち上げ成功は、誇るべき偉大な科学技術のアチーブメントなのであって、国民もその「事実」を信じているのだ。われわれは、その情景を見て笑っていたが、日本の科学もいよいよ北朝鮮と同じ滑稽な喜劇のフェーズに突入してしまった。ナチスと同じファシズムのカルト科学の暗黒に。ロシアがまだソ連だった頃、モスクワを旅したときに赤の広場のレーニン廟に入った経験がある。当時の触れ込みでは、レーニンの遺体は、ソ連邦科学アカデミーの最高の英知を結集した防腐処理を施した結果、死んだときのままの姿でガラスの棺の中で眠っていることになっていた。あの薄暗い廟の中、果たして、私の目に映ったものは、素人目にも一目瞭然の蝋人形だった。一緒に日本から行った者たちは、ホテルに帰った後、同じ感想を口にした。