産経新聞のサイトにある「話の肖像画」の
漆間巌特集は、2007年11月に5回にわたって連載されている大型企画である。そこでは、警察庁長官を退官して(財)交通事故総合分析センターの理事長に天下る前の漆間巌が、余裕綽々で「特務機関」エリートたる自己の半生を回顧して語っている。この後、2008年9月に麻生内閣の官房副長官に任命され、現役に復帰して官僚組織の頂点に立つことになるが、もし官房副長官への抜擢がなかったら、おそらく漆間巌は「産経文化人」の新人として右翼系論壇にデビューしていたのではないか。漆間巌を見ながら、その先輩格として思い浮かぶ人格は
佐々淳行で、二人は同じ類型であり、79歳の佐々淳行の「産経論壇」における後継者の役割が漆間巌に期待されていたものと推察される。右翼系の論者ではあるが、佐々淳行は法律に詳しく、論理明快で、刑事法の規定と適用が頭に入っていて、公安事件の捜査の解説は説得力があった。漆間巌が佐々淳行の後釜を務める知能を持っているかは不明だが、「諸君」や「正論」に寄稿する右翼論客の常連として名を連ねていたことだろう。