フォーラム神保町の討論会にも飛び入り参加した郷原信郎の主張について、バランスのとれた議論だと評価する声も一部にあるが、私はそのようには思わない。法律論としては相当にバイアスのかかった議論であり、今度の事件の認識についても正鵠を射た見方が示されているとは言えない。基本的に大きな勘違いをしている。郷原信郎の議論は、この領域の専門家が小沢擁護の立場で発言していて、マスコミ全体が検察のアンプとなりスピーカーとなっている現状では、その言論の意味はきわめて大きいが、議論の中身に立ち入ると首を傾げざるを得ない主張が縷々並べられている。結論から言えば、郷原信郎の議論がバランスのとれた議論なのではなく、小沢一郎寄りにアンバランスな郷原信郎の議論が、検察寄りに過度にアンバランスなマスコミの主張と相殺されて、どうにかこの事件の言論状況に均衡を与える一助となっているというのが正確な表現だろう。その点で郷原信郎の言論には価値がある。しかし、議論そのもののアンバランスはアンバランスであり、元検事の専門家による検察批判だから中身も正論だと両手を上げて礼賛することはできない。