2009年本屋大賞を受賞した湊かなえの『告白』を読んだ。どの書店でもこの本がうず高く店頭に平積みされている。積み上げられた冊数が他の本と較べて段違いに多く、猛烈な勢いで売れていることがわかる。期待して読んだが、中身は評判以上で、想像をはるかに上回る完成度の高い作品だった。これだけ前評判が高く、そして前評判を超える感動を得られる本に出会う経験は滅多にない。村上春樹の『海辺のカフカ』以来だろうか。この小説は、とにかくアイディアが素晴らしい。本の帯に広告宣伝コピーとして読者の感想が載っていて、「これから読む人に言いたい。寝る前に読まないで下さい。読了まで眠れなくなります」と書いている。この短い言葉が、この本の何たるかを最もよく言い得ている。途中で止められない。息をつく間がない。先へ先へ読ませる。暗くて恐い物語の中に入ったまま、関心がその世界に没入して、読み終わるまで出られなくなる。小説であれ何であれ、通常、最後まで一気に読み通せる本は本当に少ない。この本はそこが全く逆で、展開があまりに完璧すぎて、途中で読むのを中断して本を置くことができなくなる。展開と構成の絶妙さに息をのむ。