小説『朗読者』を映画化した『愛を読むひと』を見てきた。小説は10年ほど前にベストセラーになって、ネットの中でもずいぶん話題になった記憶がある。この作品でハンナ役を演じたケイト・ウィンスレットは今年のアカデミー賞主演女優賞を受賞している。物語は15歳の少年と36歳の女が出会って恋に落ちるところから始まる。15歳から52歳までのマイケル役は二人の男優でキャストを分けるが、67歳で死ぬまでのハンナ役はケイト・ウィンスレットが一人で通す。その演技力が絶妙で、アカデミー賞主演女優賞の実力とはまさにこれだと感嘆させられた。ひょっとしたら、67歳の老婆のハンナ役は別の女優を使っているのではないかと疑ったほどだ。ケイト・ウィンスレットはまだ33歳。思ったことは、日本の同じ年代の女優であれほど完璧な老婆役を演じられる女優がいるだろうかということで、演技力という言葉の古典的意味について考え込まされる。夜の民放のお笑い番組を見ていたら、47歳の斉藤慶子と42歳の国生さゆりが出てきて、現役の男子大学生がストライクだのボールだのとやっている。日本のアンチエイジングは妙に空疎で、女たちの容貌は、中年を過ぎても確かに若くてかわいいが、若さのアピールを軽薄さのアピールとイコールにしているところがある。