発表された民主党のマニフェストを2年前の参院選と4年前の衆院選のものと見比べて気づいた点がある。先の二つのマニフェストには載っていた重要な文言に異同がある。それは「格差」という言葉が消えている事実だ。2年前の参院選のマニフェストには、7つの提言の第1項目に「雇用を守り、格差を正す」と大きく掲げられていた。4年前の衆院選のマニフェストにも、2番目の項目に小文字ではあるが「安心・安全で格差のない社会の実現」が明記されている。今回のマニフェストには「格差」という言葉がどこにも書かれていない。最初から最後まで読んだが、「格差」の二文字は消えていた。民主党のマニフェストについて様々な批評がされているけれど、私が発見した最も重大な問題点はこの点であり、過去のマニフェストと比較して看過できない相違点は格差社会に対する現在の民主党の認識である。マニフェストには現在の社会の現状をどう捉えるかという政党の社会認識が示される。国民の不満や希望がどこにあり、政党として何を政策の根本にすべきかを示す総括が表現される。その社会認識の概念は、政党がめざす社会の理念や構想の基礎になるものであり、政策を提示する選挙公約では決定的に重要なもので、列挙される個別具体的な政策カタログよりも枢要なものである。