今回の選挙での麻生自民党の戦略は、一貫して民主党に対するネガティブ・キャンペーンに徹していて、無意味な粗探しと聞くに堪えない中傷や暴言で埋め尽くされている。まともな政策論議など何一つない。「政権交代」が起きる歴史的な選挙でありながら、討論のレベルは、これが日本人の国政選挙の論戦かと目を疑うばかりの悲惨な状況を呈していて、テレビを見る度に(特に麻生首相の顔が映ると)気分が悪くなる。選挙戦の序盤では、マスコミと手を組んで民主党の財源論叩きに明け暮れていたが、大敗の情勢が明らかとなった中盤には度を越して品が悪くなり、演説内容も渋谷の街宣右翼並みの低劣なものになった。「国旗を切り裂いた」云々の、まるで暴力団の言いがかりを聞くような話が延々とテレビで放送されたが、このような主張を自民党の党首が選挙でするのを聞いたことがない。常識で考えても、放送時の編集でカットされるのが当然だと思うが、なぜかNHKはこの問題が選挙の主要な争点のように大きく報道し続けた。自民党側から要請が入っているのだろう。異常なことが起きているのに誰も異常だと言わない。マニフェスト選挙と言いつつ、今度の選挙の中盤は政策プロパーではなくグロテスクなイデオロギー攻撃が主役になって、人々の関心に無理やり割り込んでいる。