延坪島の市街地から煙が空に立ち上る映像を見ながら、9年前のNYで起きた同時多発テロの遠望写真を思い出した。海越しに撮影した構図と色相がよく似ている。爆撃された戦場の光景だ。テレビ報道では、島の山側から着弾場面を捉えた解像度の粗い映像と、海側から撮った黒煙が立ち上る鮮明な映像の二つが出ているが、海側からのものは、大延坪島から伸びた砂州の先にある漁港から撮したものだろう。天の橋立や海の中道のような細長い砂州が市街地の端から海上に伸び、その先に小島の陸地があって、漁船が接岸する埠頭が設営されている。テレビで紹介されているとおり、この近海は豊富な漁場で、特にワタリガニがよく獲れる。韓国人はこれをキムチやチゲ鍋の具材にする。一方、豆板醤で炒める中華料理は中国人の好物で、そのため最近は中国漁船が島の近くで乱獲し、中韓間で重大な漁業問題になっていた。海からの映像は、仁川発の船で訪れた観光客が捉えたもので、おそらく漁港が観光地にもなっていて、彼らはカニの賞味と購入を目当てに来ていたのだろう。戦争が始まったような状態になった。この先を考えると憂鬱だ。平和が破れ、戦争に近づいて行く。周囲の現実と環境が、平和から戦争に変わって行く。生活する日常が戦時下の国のそれに変わって行く。平和な社会の常識が通用しなくなり、平和を求める声が非難と罵倒を受け、少数派となって掻き消され、平和の正論を言えない言論状況になる。