民主党の消費税増税策を支持する場合の一般観念として、次のようなものがある。すなわち、右肩上がりの経済成長などというものは、今後の日本ではもう望めず、少子高齢化が進行する社会では、現役世代の負担がきわめて大きくなり、国民は必要な社会保障のために高負担をするのが当然で、消費税増税には積極的に応じるべきだ。テレビの論者からこう言われたとき、否と首を横に振る者はいない。多くの者がこの命題を真として受け入れている。このテーゼは、日本において圧倒的な説得力と信憑性をもって個々に迫り、特に若い世代の意識を制圧(洗脳)している。あと少しして、消費税増税が菅直人と官僚とマスコミの思惑どおり実現したあかつきには、次は上の命題の「消費税増税」のところが、「外国人移民」に置き換わるだろう。新自由主義の政策課題が次々と入り、テレビで国民を折伏し、マスコミの世論調査で多数意見に押し固め、反対の声を駆逐し、その政策を実現してゆくに違いない。しかし、この命題は本当に真なのか。無批判に肯首しなければならない絶対命題なのか。私は、この命題には前提に疑うべき問題が潜んでいると思う。フィクションとトリックがある。それは何か。端的に言って、今、われわれが極端な右肩下がりの経済的現実の中にいるという事実が意図的に捨象されている。ナイアガラ・フォールズのような急降下の経済的現実にあるという前提が隠蔽されている。この命題は、右肩下がりの現実を、恰も平衡しているように共同幻想する錯覚を巧妙に利用したイデオロギーだ。