たとえば、新聞社から世論調査の電話取材を受けたとき、特に今回の選挙のような場合、受話器の向こうの人間にどう回答するだろうか。私の場合、選挙区は別にして、比例区は国新・社民・共産の中から投票する選択になる。だが、おそらく、電話取材に対しては、「まだ決めてない」と答えるのではないか。実際のところ、この3党のうち1党を選ぶのには、多少の熟慮が必要で、選挙終盤の情勢を睨んで、最も劣勢の党に票を入れるという判断になるだろう。だが、それ以上に、電話の向こうのアルバイトに、具体的な政党名の情報など与えたくないという動機が強く働くからである。質問は電話で受ける。と言うことは、相手の新聞社は私の名前と電話番号を知っている。個人情報の台帳を持っている。台帳を元に調査対象に抽出されたわけだ。そのような相手に、迂闊に「政党名」などは言えない。アルバイトは、作業机のPCにExcelを開いていて、ワークシート上のセルにある氏名を確認しながら、電話で投票予定の政党名を聴くのである。当然、回答した政党名の情報をセルに入力する。集計はExcelを使って行われる。
ドロップダウンのリストの選択肢を入力する方式で、電話を持たない片手(右手)のマウス・クリックで入力処理するのだろう。という調査現場を想像すると、電話の相手に政党名を回答することは、きわめて危険な個人情報の漏洩のリスクを背負う行為だと気づく。民主や自民なら答えやすい。だが、社民や共産や公明となると、それは他人には簡単に言えない。