急激な円高と株安が同時進行している。円高はドル安・ユーロ安を意味するが、米国と欧州の通貨当局は輸出振興による成長効果を期待して為替安を歓迎しているため、協調介入は困難で、円高は防ぐ方途がないという説明になっている。株価が下がれば企業の含み益が減り、来年の設備投資と雇用計画に悪影響を及ぼす。また、円高は製造業の海外移転に拍車をかける要因にもなる。2年前の派遣切りのような事態が再び起きなければいいが、環境としては悪夢が再現する危険性は十分あるように思われる。マスコミが醸成して固める社会の空気が、それを容認する方向に変わっているからである。今日(8/25)の日経の1面では、編集委員の菅野幹雄が政府に対策を要求し、①法人税率の引き下げと②新規事業のタネを増やす規制緩和の二つの成長戦略を前倒しせよと言っている。この主張は、夏休みを終えて今週から報道ステーションに復帰した古舘伊知郎の喋りと全く同じだ。古舘伊知郎は「規制緩和」とは言わず、その表現だと新自由主義の響きがするのを憚るのか、言葉を変えて「規制改革」と呼んでいる。菅野幹雄の方は、日経の読者の殆どが新自由主義者とその予備軍であるため、こうした言い回しの気兼ねをする必要がなく、そのまま「規制緩和」と言っている。菅野幹雄と古舘伊知郎が前倒しを要求している規制緩和の中身は、医療と農業の分野への自由な資本進出であり、医療と農業の民営化である。