エジプトの民衆は、決して日本のマスコミが言うような「親米穏健派」ではなかった。この10年間を振り返っても、
イラク戦争、
レバノン侵攻、
ガザ侵攻と、中東で米国とイスラエルによる侵略と殺戮が起きるたび、カイロでは大きな反政府デモが起き、市民が警官隊と衝突を繰り返していて、その激しさは中東の中で群を抜いていた。デモは反米反イスラエルの抗議行動だから、中東の各地で同時多発的に発生し、プレスが世界に記事を配信する。それをネットで見ることができる。ロイターやAPの写真を探して見ると、カイロのデモの光景は常に凄絶で、武装した警官隊が棍棒を振り上げてデモ隊に襲いかかる場面が必ず撮られていて、ショール姿の美しいムスリムの女子学生が収まったベイルートやアンマンのデモの絵とは様相が全く違っていた。エジプトのデモの絵は流血の衝突が定番で、市民は常に怒りの叫び声を上げ、黒いヘルメットに棍棒の警官隊とぶつかっていた。路上に張られた有刺鉄線が生々しかった。パキスタンのデモは stars and stripes burning が定番だったが、エジプトのデモは protesters injured が常だった。
アルジャジーラのネットのニュース映像で"ANGER"がキーワードになって報道されているが、この10年間のエジプトの反政府デモを思い起こすと、まさにその言葉こそ象徴的だと私には思われる。