工程表の改訂について、マスコミは「新しい冷却方式を採用した」などと
評価しているが、それは東電の会見を鵜呑みにしているだけで、問題の本質を全く理解していない。アレバの除染設備で汚染水を処理して循環させる件は、すでに3月から進めていて、4月の
工程表の中にも含まれている。正確に評価すれば、単に水棺が失敗したので後回しにしただけにすぎない。東電は、水を除染して循環させる方式を「循環注水冷却」と呼んでいるが、冷却と言うかぎりは熱交換の仕組みを経路に挿入することが必須である。マスコミ報道は熱交換について注目せず、それがなくても冷却システムとして可能であるように説明している。新旧の工程表を比べ見ると、旧工程表ではステップ1に「熱交換機能の復旧」を入れていたが、新工程表ではステップ2に回している。要するに、東電にとっては現在が「安定冷却」の状態なのであり、原子炉が高温高圧になって水素爆発や再臨界が起こる危険がない小康状態であれば、それを「冷温停止状態」と言うのである。つまり、半年後に現在の状態のままでも、その時点で東電は工程表を達成したと言う魂胆なのだ。見直された工程表は、全体がさらに杜撰で曖昧になっている。ここでわれわれが気づかねばならない事実は、この工程表には何の法的な根拠もない点で、工程表を遵守しようがしまいが、結果がどうなろうが、東電に法的な義務や責任はないのである。法的強制力がない。