自民党が内閣不信任案を急ぐ問題について、マスコミが言わない理由を正しく解説する必要がある。それは、賠償スキームについての態度を明確にできず、債権者(金融機関)の責任を直截に認められない立場にあるからだ。
党の中には、債権者や株主の責任を国(国民負担)より重く見る者も一部いるが、それは世間向けのポーズであって、党の基本姿勢は経団連や与謝野馨と同じである。だから、この問題で世論をリードすることはできないし、民主党が賠償法案を提出して審議を始めれば、自民党の方は立場を失って有効な反論ができない。自民党の本音は、賠償法案を先送りしてもらいたいのであり、この国会で正面から審議したくないのだ。同様に、エネルギー政策についても、菅政権ほどにも脱原発の方向に踏み込めず、本格的な政策論争になれば、自らの反動的体質が露わになってしまう。震災の復興計画についても事情は同じで、復興構想会議に乗らなかったのはいいものの、自民党としてまともな対案を用意していない。
五百旗頭真の復興増税案で国会論戦になったとき、自民党は対案を示して反撃できないのであり、政策能力の欠如が国民の前に曝されてしまう。早く国会を閉じたい動機は、菅政権以上に自公の側にある。そのため、ベントの遅れだの、海水注入中断だの、官邸の初動ミスを保守マスコミに突っつかせ、それを政局にして騒動し、不信任案での逃亡を正当化しようと画策しているのである。