最近、橋田壽賀子のNHKドラマ「おしん」を思い出すことが多い。1983年のNHKの連続テレビ小説。10年ほど前にBSで再放送してくれた機会があり、この国民的作品のほぼ全編を通して見ることができた。「おしん」は明確な反戦ドラマである。向田邦子とか、橋田壽賀子とか、戦前、戦中、戦後を生きてきた作家たちの、この時代の描き方は一貫したものがある。芯の通った歴史認識があり、そこを揺るがせにはしなかった。1983年は日中国交正常化から11年後。「おしん」は世界中で放送され、特にアジア諸国で人々に感動を与え強く支持された。このドラマは、まさに日本の最も有力な宣伝情報として活用され、世界の人々から日本への好感や信頼を獲得するのに貢献した。日本が「戦後日本の平和主義」を外交の場で強調するとき、それが一般表象としてアジアの人々に納得される際は、「おしん」の映像の記憶が仲立ちしている。インドネシアでは農村へのテレビ普及に「おしん」が決定的な役割を果たし、2003年に来日したメガワティ大統領が、ASEAN特別首脳会議での夕食会の席で、身を乗り出して「おしん」談義に花を咲かせたこともあった。この当時、「おしん」の歴史認識は日本人の一般的なものであり、「おしん」は若い世代に歴史を教える標準的な教材だった。日本人の中で「おしん」の反戦平和主義は普遍的な思想だった。