再生産構造がフリードマンモデルになっている経済社会で、アベノミクスの諸政策を投与するとどういう結果になるか。森ゆうこが言った「シロアリとハゲタカに餌を与えるだけ」という指摘こそ、まさに結論として正鵠を射た一言だ。経済の構造そのものがすでに変質していて、ケインズ的なオペレーションが嘗ての教科書どおりの効果と影響を導かない。内需の喚起や所得の増加や消費の増大という、一般モデルに表象された成長的均衡へと向かわない。一般モデルの前提的基礎がこの国では失われている。安倍晋三の「機動的な財政出動」の中身と帰結がどのようなものであるかは、詳しく説明する必要もなく、まさしくシロアリの巣の増殖そのものだということは誰もが想像し直観できることだ。補正の10兆円について、各省から積み上がった施策事業を精査分析した情報はマスコミからは出ていない。これが、また新しい天下り独行法人を増やし、省利省益の既得権となって毎年度の予算にへばりつくものになることは、普通の国民なら誰でも分かる。マスコミがこの「財政出動」にメスを入れず、叩かないのは、マスコミが官僚の権力機構の一部だからだ。マスコミが安倍政権に対して翼賛報道に徹するのは、官僚が安倍政権を歓迎しているからである。子ども手当のように国民にバラ撒くのではなく、官僚の省利省益にバラ撒いてくれるから、両手を挙げて大歓迎なのであり、官僚の広報であるマスコミに翼賛報道をさせる。