横浜で開かれたアフリカ開発会議で、安倍晋三が5年間で1.4兆円のODA(政府開発援助)を実施すると
発表した。この政策についてマスコミは、もっぱら中国との対抗上必要という論調で報じ、政府の主張をそのまま記事やニュースにして流している。中国との支援競争という背景が強調され、「敵に遅れをとるな」という理由だけが前面に押し立てられて政策が積極的に意義づけられ、1.4兆円という膨大な税金の支出が正当化されている。マスコミは
ODAについては一度も財源について言わない。財源が何かを説明しない。マスコミだけでなく、萱野捻人のようなタレント論者も、社会保障については「財政を圧迫するから削減しろ」とか「増税で財源を作れ」と言い、不人気な政策を国民に迫る「不利益の分配」の時代だと言う。社会保障の充実を要求する左派は時代遅れだと論難し、竹中平蔵的な「聖域なき」「小さな政府」こそ正しい路線だとテレビで言い散らすのだが、ODAのバラマキについては「小さな政府」や「不利益の分配」の対象外らしい。平気で捨象する。今の日本の言論において、財政赤字の要因になっているのは社会保障だけで、だから生活保護の削減は当然視されるのだが、ODAやIMF救済(4兆8000億円)や東電救済(
3兆9000億円)については、全く責任を負わされない。財政難が深刻化して国債に危機が迫っているにもかかわらず、ODAの青天井の方は逆に拍車がかかっている。