来年の今ごろ、と言うと、消費税が8%に引き上げられて3か月が経った時期になるが、庶民の生活は悲鳴を上げる事態になっているだろう。消費税についてはずっと論争が続けられてきた。増税の影響について最も議論が高まったのは、2007-09年にかけての時期だったが、結局、2010年に民主党(菅直人)が裏切り、2012年には政治の場で決着がつき、今は深い議論がされていない。2007年に消費税論議が起きたとき、財務省がキラートークで繰り出した言説は、「セーフティネットの充実のため」「将来世代の負担軽減」で、それまで言ったことのない絶妙の口実を持ってきた。2000年代前半までは、「国の借金財政の再建」「世界一の赤字で国が潰れる」という口上であったこと、思い出さなくてはいけない。山口二郎、宮本太郞、神野直彦を動員し、さらには湯浅誠にまで寝返らせ、巧妙に左側の反対派を切り崩して、消費税増税をマスコミと論壇で正論にして行った。2007-09年の当時の議論を振り返ると、1997年4月の5%への増税が、どれだけ個人消費を落ち込ませ、日本経済に悪影響を及ぼしたかという事実が、データを伴って縷々述べられ、国民の中で正論の認識として定着していたことを思い出す。消費税増税によって景気が悪化し、税収が落ち込んで財政悪化に拍車をかけたのであり、1997年の消費税増税は失敗だったという結論が一般で確定されていた。