当初、笹井芳樹についてはシロだと確信していた。笹井芳樹が捏造に関与しているという疑いは抱いていなかった。その理由は、不正に手を染める動機が考えられないからであり、功なり名遂げて科学世界の
雲上人となり、いずれ文化勲章も首にぶら下げる身の笹井芳樹が、そのような人生を棒に振るリスクを冒すとは思えなかったからである。心証が変化したのは、4/16の会見を見てからだ。言い逃れと他者への責任の押しつけに終始した醜い口上を聞き、そして、小保方晴子と共に「STAP」論文のNature採択に狂奔した2013年の姿を想像し、さらにそこから、今年2月の疑惑発覚後の二人の不審な行動を訝ると、本人も何らか改竄や捏造にタッチしていたのではないかという疑念を拭い去れない。大隅典子の反論記事は、笹井芳樹が「STAP細胞」の存在を合理化する根拠の3点全てに対して、真っ向から疑義を唱えて反駁し、「STAP細胞」そのものが捏造の産物ではないかとする見解を示している。もし仮に、大隅典子の記事のコメントが指摘するように、ライブセルイメージングの観察と解析のプロセスで、そこに操作や偽装が入っていたなら、笹井芳樹の関与は免れないことになるだろう。笹井芳樹には不正の動機がないと思った。だが、よく考えれば動機はあるのだ。それは、後から、下から這い上がってきて、自分を追い越した山中伸弥へのリベンジの執念である。人間の欲はどこまでも深く、男の嫉妬は凄烈だ。