日米首脳会談でオバマが尖閣への安保条約適用をコミットした問題について、いわゆるリベラル系はそれを過小評価する論を一斉に上げている。孫崎享や田岡俊治などがそうだ。このコミットがあったからと言って、尖閣での武力衝突の可能性が大きくなったわけではなく、また、米軍が中国軍と即戦闘を始めるということにはならないと言っている。寺島実郎などもこの意見だろう。これらの面々は、従来からずっとこの基調の主張を続けていて、米国は中国と親密で良好な関係を維持することを望んでいるのだから、尖閣などのために中国と戦争する気などさらさらないと言い続けている。かかるリベラル系の言説と論陣は、尖閣での国防の危機を唱えて対中国ナショナリズムを煽り、日米同盟強化と中国撃退を言い散らしている右翼のプロパガンダに対しては、一つの対抗言論となっていて、過熱する右翼系の中国打倒論に冷や水をかける一つの説得力となっている点は間違いない。また、この認識が、全く根拠のないものではなく、米国のリベラル系の意思や展望とも平仄の合ったもので、米国の中のリベラルが、右翼日本と心中して米国が中国との戦争に巻き込まれる事態を懸念していることも事実だろう。孫崎享や寺島実郎の日米関係論や米中関係論は、米国のリベラル派の思惑の代弁でもある。しかし、彼らの「慎重な見方」は、現実の認識において必ずしもリアルとは言えず、主観的願望を投影した「安心理論」になっている点も否めない。