内田樹の新年の年頭予言にこんな
ことが書いてあった。「統治システムが瓦解しようと、経済恐慌が来ようと、通貨が暴落しようと、天変地異やパンデミックに襲われようと、『国破れて』も、山河さえ残っていれば、私たちは国を再興することができる。私たちたちがいますべき最優先の仕事は『日本の山河』を守ることである。私が『山河』というときには指しているのは海洋や土壌や大気や森林や河川のような自然環境のことだけではない。日本の言語、学術、宗教、技芸、文学、芸能、商習慣、生活文化、さらに具体的には治安のよさや上下水道や交通や通信の安定的な運転やクラフトマンシップや接客サービスや・・・そういったものも含まれる。日本語の語彙や音韻から、『当たり前のように定時に電車が来る』ことまで含めて、私たち日本人の身体のうちに内面化した文化資源と制度資本の全体を含めて私は『山河』と呼んでいる。外形的なものが崩れ去っても、『山河』さえ残っていれば、国は生き延びることができる」。これを読んで、ずいぶんお気楽な認識と展望だなと率直に感じた。例の、左翼系学生が昨年言ったところの、「日本の民主主義が滅びたら、僕らが一からやり直せばいい」という話への感想と同じだ。内田樹によれば、日本の統治システムは滅びるだろうが、日本人の中に内面化された「文化資源」は滅びることなく、それを土台として再生を果たすことができると言っている。