安倍晋三の70年談話は、テレビで聞いていて非常に分かりにくかった。注目された四つのキーワードは文章に盛り込まれたが、単に形だけ盛り込んだだけで、言葉を使っている意味は村山談話とは全く違うものになっていて、悪辣な意図で換骨奪胎が細工された面妖な構文と表現になっていた。野党のコメントと民放のテレビ報道で共通して指摘されたように、侵略と植民地支配は一般論を述べた件に語が配置されていて、日本が過去に侵略と植民地支配を行ったという歴史認識が示されていない。これは明らかに村山談話の否定であり、百歩譲っても、マスコミが言うとおり村山談話からの後退だろう。朝日の
社説も、有識者懇談会ですら大陸への侵略を報告書に明記していたのにと非難しているが、私も、テレビ中継を見ながらその点を強く意外に感じた。あの御用学者で右翼論者の北岡伸一ですら、侵略したことは間違いないと何度も
発言し、「お詫び」は入れなくていいが「侵略」は入れる必要があると強調していたにもかかわらず。有識者の報告書はどうなるのだ。結局、安倍晋三のかねてからの持論を押し通し、侵略したという歴史認識を談話から排除した。植民地支配も同じで、韓国に対する日本の植民地支配とは全く無関係な文脈でこの語を使っていて、村山談話の歴史認識は踏襲されていない。韓国国民は大きく
失望したことだろう。