< 2022年9月 > | ||||||
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政治家としてゴルバチョフを回顧するとき、忘れられないのは、民衆との対話の姿である。映像を見ながら心底から驚かされ、感激させられた。ゴルバチョフは実際に民衆の中に進んで入って行った。歩いて抗議者の群れと対峙した。ロシアは決して(過去も現在も)治安のよい国ではない。そのとき、88年頃だったと記憶するが、ソ連経済はマイナス成長の縮小循環に陥っていて、深刻な経済危機に襲われていた。給料の遅配欠配が各地で相次ぎ、政府への国民の怒りが沸き起こっていた。ペレストロイカは国内経済の面ではうまくいかず、逆に経済全体の破綻と崩壊の様相を呈していた。
そうした民衆の不満と憤懣の渦の中に、ゴルバチョフは自ら飛び込み、自己の信念と方針について説得を試みていた。群衆と隙間なく身を接し、唾を飛ばし合い、揉みくちゃにされる状況で、自らを激越に批判してくる人々と対面した。路上で無名の市民を相手に喧々諤々の討論をした。警備も何もあったものではない。書記長だからソ連のトップである。激動の時期に、よくこの行動ができるものだと、テレビを見ながら私は興奮し、危険を顧みず対話の政治を行う指導者の勇気に感嘆した。ゴルバチョフは、まさにこうあって欲しいと願う政治家の像を見せ、若い私を魅了した。社会主義とは理想主義である。
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