長船青治の小品集

長船青治の小品集

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  • ジャンルノンフィクション
  • 公開開始日2015/01/18
  • シリーズ長船青治の小品集
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この小品集を甲府文学会同人の故・生保内育さんと長野の「三文評論」同人の東天紅こと故・岩崎重雄さんと大阪のアナキスト詩人の故・向井孝さんに捧げます。3人とも私のなかで学恩ある大切な人たちでした。1968年大学3年になって新日文甲府読書(者)会に参加し、同人誌「1970」創刊号から私は、掌編小説の習作群を発表した。生保内さんの千塚町(当時)の自宅に何度も何度もお邪魔して、今から思えば恐ろしいほど牢獄のような酷くぎこちない小説を見てもらっていた。私は大概は、蛇に睨まれたカエルのような体であったのに、回を重ねる毎に「私と長船君は、人間として対等なんだ。」と口角泡を飛ばして何度も何度もいろんな小説を例にあげて噛んで含めるように説明してくれたのでした。「中野重治全集」の中からエッセイと評論を2册借りて帰った。今まで描いていた中野重治のイメージからは想像できないほど平易で読んでいる時は全て理解できたような気持ちになったものだった。1969年、私たちが大学を占拠していた間、当局と教授会は授業を放棄していたので私たちは自主講座をすると内外にビラを撒き、第一回の講師に生保内さんを招聘したら案の定、学生自治会の後輩たちや同級生たちに囲まれてものすごい討論集会になったのだった。本館5階から玄関迄、白い布の垂れ幕に講座のタイトルが何だったか忘れたが「新日文甲府読者会・生保内育先生」と「全共闘文字」で書かれたのを見たのであろう教室で司会をした私に生保内さんは、後日、嬉しそうに「あの垂れ幕と立て看は照れくさくて参ったよ。」と告げたのだった。
私は、帰郷する前に、最後の挨拶に自宅を尋ねた時に、姫路の向井孝さんの出していたミニコミ「イオム通信」を貰い彼を訪ねて行くよう言われたのでした。1970年、生来の無自覚とは言え甲府刑務所(未決)独居房で数ヶ月の拘禁生活から保釈で解放された時は。やはり一応の敗北感や挫折感はあったと思う。すぐには立ち直れなかったが、その年の夏から、私はバイクで毎月のように姫路市亀山にあった向井さんの自宅で開かれる10人位の「茶話会」に行くようになったのだった。向井さんは、出し始めたばかりのガリ版刷りの私のミニコミ「青洞記」を「キミの小説より面白い。」と毎号、褒めてくれた。1972年から3年位、私は、両親の了解を得ぬまま、大阪~新見~甲府~東京へと放浪の旅というか、結局はまた両親のいる幸せな「家庭」に戻ったのですが、その頃の1ヶ月か2ヶ月、向井さんの大阪の「サルートン」という実験的アナキズム共同体のアパートで「いつまで使っても いいから、」と彼の書斎を私に貸してくれたのだった。ああ、その前に向井さんから長野のアナキズム文芸同人誌「三文評論社」の東天紅(通称・トテ)こと故・岩崎重雄さんを紹介されたのでした。トテさんは、名古屋大出身で長野高校(夜間)の数学教師で、「長野ベ平連」を主宰していたのだった。と書くとまた「正確でない。」とすかさずトテさんから手紙が来るところだが、ええ加減な私は続けてこう書いてしまう。私のミニコミと交換してもらった「パルチザン通信」の岡田孝一さんはトテさんと名古屋大で同級か1年後輩だったと彼の「風見鶏通信」で読んだ気がする。「長野べ平連」に参加していた長野高 " 全共闘の2人を紹介された。トテさんにどうしても会って置こうと1972年の正月休みに雪の中、岡山から長野迄、まだ蒸気機関車の時代に行っている。
長野高" 全共闘の3年のS氏のミニコミ「うれしがり」と同級生で休学中の霜田誠二氏のミニコミ「BUKKOWASHI」と私の「青洞記」は、それぞれ低読者数競争をやっていて 10人を切る号はザラだった。向井さんと寺島さんが編集した「日本反政治詩集」に1個ずつ載せる予定だったがなぜか霜田氏だけ断固拒否したのを覚えている。別に示し合わせてそうしたのではないが、同じ時期に家出した我々3人は釜ヶ崎のアナキズム運動誌「自由連合社」の高殿アジトで会っている。トテさんの手書きのタブロイド版か単なるコピー版だったのかよく分らないような「個人通信・風見鶏通信」の存在は、無くなって初めて希有な潔癖な実直な愚直な彼の優しさに溢れた彼を取り巻く長野の市民運動の時事通信だったことに気が付くのである。その頃の世の中は今では信じられない位、ほとんど全ての人々があらゆることに沈黙していて、少数の日本アナキスト連盟と岡山大犯罪者同盟と高共闘の異端児と無名の若い詩人たちだけ完全に浮いていた。
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