吉川聖哉は、大学生時代に人気スマホアプリを開発し起業した二十五歳の事業家だった。
頭脳明晰で抜群のルックスを持ち、社交的な聖哉は
まさにイケメン社長と呼ぶにふさわしく
大学生時代には一部のメディアでも取り上げられたこともあった。
しかし、この一年ほどは業績が低迷し、聖哉は苦境に立たされていた。
一時期は二十名ほどいた従業員も現在は五名の社員と
数名の学生アルバイトといった体勢にまで縮小し、
聖哉はどうにかして残された社員の生活を守るために
日夜懸命に働き続けていたのだ。
スマホアプリの開発だけでは事業が成り立たなくなった事から、
聖哉の会社は取引先の企業の下請け的な業務など
どんな泥臭いことでも引き受けるようになり、
かつて若手イケメン社長として華やかな生活を過ごしていた聖哉も、
今ではあまりに惨めな姿をクライアントや営業相手の前で晒さなければいけない事もあった。