読者の方からいただいた「妄想」を元に書きました。
これが完全な妄想なのか、一部は真実なのか、それとも完全な真実なのかは聞いていません。
信じるか信じないかはあなた次第です。
あれはある雨の日だった。
私は家から少し離れた位置にある公園にいた。
「公園」と言っても、普通の公園のような遊具の設置されている広場はもちろん、草野球用の球場、さらにはちょっとした森のような林のような区域、そして駐車場もあり、俗に言う「甲子園球場何個分」と言う例えの使えそうなかなり広い公園だった。
そして私はその公園の中心近くを目指していた。
(今からあそこで・・・)
そこには公衆トイレがあった。
最近整備されたばかりでまだ真新しいトイレには通常の男女別のトイレとは別に男女共用の多目的トイレも備えられていた。
(ちゃんと表示されているわね・・・)
スマホの地図も公園のほぼ真ん中に「現在地」を表示していた。
念の為、私はその位置情報を相手に送信する。
(ついに・・・)
約束の時間にはまだ5分ほどあったが、私はそこで傘を畳むと目印になるように多目的トイレの扉の外側に置くと中に入る。
「ふぅ・・・」
緊張のあまりなのか、思わず溜息のような吐息が漏れてしまう。
(ここで今から・・・)
自分が何をされるのか想像するだけでドキドキと胸の鼓動が聞こえてしまいそうなくらい緊張が高まっている。
それは単純な緊張だけではなかった、期待とそしてちょっとした恐怖のような気持ちも入り混じっていた。
そして、その緊張を紛らわせるようにトイレの中を再度確認する。
まだ新しい上に普段の整備もちゃんとされているのだろうか、中は家のトイレと同じくらいか、それ以上とも言えるくらいかなり綺麗だった。
さらには公園のほぼ中心部にあるにも関わらず、車椅子で入っても十分過ぎるであろうと思われる広さも確保されて、もちろん手摺も備えられていた。
(確かに、ここまでフラットだったなぁ・・・)
公園を入ってここに至るまで多少の勾配はあったが、段差はほとんど無かった。
実際に利用する人がいるかどうかは別にして車椅子でのアクセスも可能と言う事なのだろう。
(ここなら大丈夫よね・・・)
雨脚は強まり、大きな公園の、しかも少し奥深い場所にあるそのトイレには誰も来る気配はない。
(それに、あの人ならきっと大丈夫・・・)
まだ見た事も会った事も無い相手を信じると言う事には無理があるような気はしたが、そう思って心を落ち着けるしかなかった。
(ここで、私は、今から・・・)
ドクン・・・、ドクン・・・
扉を閉めた事で雨音が少し遠くなり、自分の心臓の鼓動がより大きく響くように聞こえて来ていた。
(本当に大丈夫かな?)
期待と共に不安な気持ちも押し寄せて来る。
(もし、騙されていたら・・・)
それはそれで私の気持ちを高ぶらせるスパイスとしては十分過ぎる効果があった。
(今更後戻りはできない・・・)
今ならまだ引き返す事は出来るかもしれない。
既に相手とは何度となくメールで打ち合わせを重ねた末にこの場所と時間を決めて連絡してある。
この場所も何度か下見をして雨の日には滅多に人が来ないと言うのは分かっていたし、衛生的で防虫対策も出来ているのは分かっていた。
(そもそも・・・)
私はこの1カ月程前からこのトイレを利用していた。