三毛猫は笑う
第3章 執筆中
甲高い悲鳴の中、H.Bの4人は階段を降りていく。
スポットライトの眩しさに目を一瞬細めながらも笑顔は崩さない。
某有名音楽番組のゲストとして呼ばれた4人。今回のメンバーの中では主役ともいえる。
むろん、客席からの歓声も凄まじい。
他メンバーの曲も終わり、H.Bの番がやってくる。
4人がステージに立つと歓声はなくなり静寂が生まれる。
静かな中、純也が小さなビートを刻み始める。
次第に大きくなるリズムに実のベースが重なる。
さらに重なる要のギター。頭を振って音楽にのる。
スタンドに手をかけ目を閉じている俊介の瞳が開いた瞬間、『歌』が始まる。
不器用なラブソングを俊介の掠れたセクシーさを感じさせる声が紡ぐ。
何人かのファンの女の子は胸元のシャツを握る。
切なさと甘さが胸をしめつける。
こんなふうに思われたい。
皆がそう思う。
手を伸ばせば届きそうなのに、届かない。
この距離がもどかしい。
静かに終わる歌。
4人が瞳を合わせ頭を下げると拍手が沸き起こる。
観客の反応に4人は満足げに微笑んだ。
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