片想い
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発行者:新菜
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2022/04/22
最終更新日:2023/06/08 23:08

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片想い 第78章 分かち合う哀しみ
(□□side)






朝も晩も、毎日隆二に抱かれてる。

前と同じ生活に戻ったみたい。


隆二に抱いてもらえると、安心するの…。

隆二に注いでもらうと、希望の光がさしこんでくるみたいで。


……でも。


また赤ちゃんが欲しいとか…
そういう具体的な話は、一切出来なかった。


出来なかったけど、あたしが中で出してってせがんだら、必ず応えてくれるから…
隆二もわかってくれてるんだと思う。


……お腹の中の命が消えてしまった、あの日…。


身も心も、引き裂かれそうなくらい、ショックだった……。


□「…っ、ひっく…っ、ひっく、…っ、ふぇぇぇぇんっ!」
臣「□□…!」
□「やだ…!やだよ…!臣…っ、臣ぃぃっ!」
臣「□□…っ」
□「うわぁぁぁぁん…っ!」


ただひたすら、泣き叫ぶしか出来なくて…

そんなあたしを、臣はずっときつく、抱きしめてくれていた。


□「どうして…!?どうして死んじゃったの…?!」
臣「…っ」
□「嘘だって言ってよ!臣っ!臣…っ!」
臣「□□…、っ」
□「いやだっ、いやだっ!いやぁぁぁぁっっ!!」
臣「…っ」


信じたくなくて…

現実を受け止めきれなくて…


臣「□□…、っ」
□「…っ」


気付けば、あたしを抱きしめてくれてる臣の腕も震えていて…

ゆっくり顔を上げたら、臣の目からも、涙がこぼれていた。


□「お…み…っ」
臣「…っ」


一緒に…泣いてくれるの…?


□「あたしと…臣の赤ちゃん…いなくなっちゃったよ…。」
臣「…うん…。」


二人とも、涙が止まらなくて…

あたし達は今、同じ哀しみを分かち合ってる。
そう思った…。


臣「□□と俺の赤ちゃんって、…言ってくれんの…?」
□「え…?」


……ほんとだ、あたし…、今…、、


臣「俺の子供だって…わかってたけど…、隆二は全然取り合ってくれなかったから…、お前がそう言ってくれるだけで…嬉しい。」
□「…っ」
臣「……産んで欲しかったよ、俺たちの子供…。」
□「うん…、ごめん…ね…っ」
臣「□□はなんも悪くない。」
□「臣…、っ」
臣「でもなんで…、なんでいなくなっちゃったんだろうな…、っ」
□「うん…、っ、…うん…っ」


あたし達は二人でぽろぽろと泣き続けて…

ひたすら強く、抱きしめ合っていた。


まるでこの世界に、あたし達二人しかいないみたいに感じられて…

どうしようもない孤独と哀しみを、たった二人で分かち合ってるみたいだった。


ひとしきり泣いて…
涙が枯れるくらい泣いて、叫んだせいだろうか。


その日の夜、隆二が帰ってきた時には…
心はもう、落ち着いていた。


臣にぶつけたみたいな感情は、もうなくて…
ただ静かに、涙がこぼれるだけだった。


「とりあえず明日からは少しゆっくり休んで…。気持ちも身体も、休めよう?」


隆二はそう言ってくれたけど、あたしは結局一日休んだだけで、すぐに仕事に戻った。


家に一人でいたら、ずっと塞ぎ込んでしまいそうだったから…。
哀しみに押し潰されてしまいそうだったから。


だから、一人でいるより、臣と一緒にいたかった。


臣は仕事の合間に、必ず毎日、あたしを抱きしめてくれる。


□「…臣…、」
臣「ん…。」
□「もう赤ちゃん…いないんだよ…?」
臣「うん。だから今は、お前にパワー注いでる。」
□「ふふ、優しいね…、ありがとう。」


慰めてくれてる、というよりは…
辛い気持ちをやっぱり分け合っているみたいな感覚で…。

臣にぎゅってしてもらうと、心が少し、安らぐの…。


□「赤ちゃん…今頃どうしてるかな…。」
臣「泣き虫なお母さんのこと心配して、空から毎日見てるよ、きっと。」
□「ふふ、じゃああたし、泣けないじゃない。」
臣「そうだよ。……でも、我慢はしなくていい。泣きたかったら、泣いていいよ。俺がいるから。」
□「…っ」


どうしてそんな風に言ってくれるの…?
優しすぎるよ…。


□「もう少しだけ…ぎゅって…してて?」
臣「いいよ、いくらでも。」


どうしてなのかな…。
こんな風に、赤ちゃんの話は…臣としか出来ない。


死んじゃった赤ちゃんの本当の父親は、臣だから…?

でもそんなの、ひどいよね…?

隆二は臣の子供だってわかった上で、父親になるって言ってくれたのに…
あたしは心の底ではやっぱり、臣が父親だって思ってたってこと…?


違う。

そうじゃない。


そうじゃないけど…、、自分でもよくわからない。


□「りゅぅ、りゅぅ、…だいすき…っ///」
隆「俺もだよ、///」
□「んっ、…あ…っ、あぁ…っ!///」
隆「…ッく///」


隆二を好きな気持ちには、何も変わりない。

今でも隆二が好き。愛してる。


だから朝も夜も、毎日のように、こんな風に抱き合ってる。


□「りゅぅ、りゅぅ、っ、…もっと…して…っ///」


熱い身体は、一つになって、何度果てても、また昇る…。


□「りゅぅっ…!愛してる…!」
隆「俺も愛してるよ、」
□「きて…、っ、…いっぱい…出して…っ!///」
隆「…ッ、…く!///」
□「中に出してぇっ…///」


ビュクビュクビュク…ッ!!

びくびくんっ!!



.


.


.



岩「最近どうなの?」
□「え?」
岩「隆二さんとは。上手くやってる?」
□「うん、ラブラブだよ、へへへ///」
岩「そっかw」


恋人同士に戻ったみたいな感じで、あたし達は毎日愛し合ってる。


岩「…子作りも再開してんの?」
□「えっと…、子作りするぞー!って言葉にしてるわけじゃないけど…、毎回中で出してくれてるよ///」
岩「じゃあそういうことじゃんね。」
□「うん///」
岩「また授かれるといいね。」


岩ちゃんは優しく笑ってくれた。


岩「来週から隆二さんいないでしょ?」
□「あ、うん!」


ソロの仕事で地方に行くって言ってた。

あたしも臣の仕事で地方に行くから、入れ違いで二週間くらい会えないんだよね。


岩「寂しかったらいつでも呼んでね、俺のこと♡」
□「え?」
岩「酒の相手でも、エッチの相手でもw」
□「はぁ!?もう!何言ってんの!」


岩ちゃんはすぐふざけたこと言うんだから。


でもあの哀しかった出来事から、あっという間に時は過ぎて…
季節はもう、夏になろうとしていた。


臣と隆二のソロツアーももうすぐ始まる。


……本当だったら今頃、安定期に入って、両家に挨拶してたはずなのにな…。

とか、たまに考えちゃうけど…

いつまでも泣いてたって、ダメだから。


ちゃんと前を向いて、歩かなきゃ…。


臣「□□…?」
□「…っ」


臣がふと、あたしを抱きしめてくれた。


□「なぁに…?」
臣「なんか…泣きそうな顔してたから。」
□「…っ」


どうしてわかっちゃうのかな…。


□「泣かないよ。だって赤ちゃんが空の上から見てるんでしょ…?」
臣「ん、そうだな。」


臣は優しく笑って、あたしのほっぺを撫でてくれた。


□「臣が毎日こんな風に、ぎゅってしてくれるから…。ありがとう…。」
臣「……これは、うん…。俺も…、だから…。」
□「え…?」
臣「なんでもない…。」


臣は今度は少し困ったように笑って…、あたしのほっぺをむにっと摘んだ。


臣「ちょっと上にこもるから、終わったら連絡する。」
□「うん、今日は缶詰だもんね。頑張ってね。」
臣「ん。」


あたしはエレベーターに乗った臣を見送って、自分のデスクに戻った。

しばらく事務仕事を片付けて、午後の会議の準備をしようと廊下に出たら…


マ「あ、□□さん…!」
□「!!!」


ここにいるはずのない人が目の前にいて、驚いてしまった。


□「えっと…、また…取材ですか?」
マ「そうなんです、月刊誌の。」
□「お疲れさまです…。」


マリアさんは最近また国内で勢力的に活動してて…
メディアでもよく見かけるようになった。


マ「□□さん、まだ隆二くんと付き合ってるんですね…。」
□「え…?」


マリアさんが小さな声で耳打ちしてきた。


マ「やっぱり□□さんが好きなのは、隆二くんなんですか…?」
□「…っ」


前にもここで会った時に、聞かれたよね…。


マリアさんから送られてきた動画のこととか…、

臣がびしょ濡れで泣いてたとか…、

臣は今でもあたしのことが好きだとか…、


あの時、わけのわからないことをたくさん言われて、あたしはもうパニックになって…
この人の前から逃げ出したんだ。


それからしばらく、頭の中が混乱してて…心の中もぐちゃぐちゃになったけど…

その後にすぐ妊娠がわかったから、もう考えないようにしてた。


……なのにどうして今、また会ってしまうの…?


マ「今、臣が何してるか、聞きたいですか…?」
□「え…?」


黙っていたあたしに、マリアさんが意味ありげに微笑んだ。


マ「臣ね、毎日□□さんの名前を呼びながら、私を抱いてくれてるんです。」
□「…っ」


どういう…こと…?


マ「毎晩、私に、注いでくれる。」
□「…っ」
マ「私は臣の子供が欲しいから。すごく嬉しいの。幸せ…。」
□「…っ」


何を…言ってるの…?


マ「勘違いしないでね。付き合ってるわけじゃないです。だって臣が好きなのは、あなただから。」
□「…っ」
マ「でも私は今でも臣が好き。愛してる。だから臣の子供が欲しいの。」
□「…っ」


マリアさんの言ってることがめちゃくちゃすぎて、頭に入ってこない…。


マ「それにね、臣、やっと…女遊びをやめてくれたんです。」
□「……え…?」
マ「今は私のことしか抱けないって、私だけなの…。」
□「…っ」


マリアさんは恍惚とした表情を浮かべてる。


マ「臣の子供を授かれたら、仕事も全部辞めるつもりです。女の幸せを全うしたいから。」
□「…っ」
マ「それじゃ、また。」


マリアさんは笑顔のまま、あたしの前から去っていった…。


なに…?

なんなの…?


どういうこと…?


胸の中に、真っ黒な感情が広がっていく。


マリアさんが臣の子供を妊娠したら、すごく嫌だって思ってしまうのは、どうして…?


だってあたしは、臣との子供を失ってしまったのに…。
マリアさんは、今からそれを、手に入れようとしてるの…?


嫌だ…!

絶対に嫌だ…!


どうして…?

あたしの名前を呼びながらって、何…?

どうしてあたしの名前を呼びながらマリアさんを抱いてるの…?


もうわけがわかんないよ…っ





……コンコン。


臣「ああ、□□。」
□「ごめんね、定時になったから帰る。」
臣「そっか、」


ちょうど休憩中だったみたいで、レコーディングルームには臣しかいなかった。


臣「どうした?大丈夫か?」
□「え…?」
臣「顔色、良くないから。」
□「…っ」


臣はまたあたしをふわりと抱きしめてくれた。


「臣、やっと…女遊びをやめてくれたんです。今は私のことしか抱けないって、私だけなの…。」


マリアさんの言葉が、頭の中でぐるぐるしてる。


□「離し…て…。」
臣「え…?」


こんな風に、マリアさんにも優しくしてるの…?
マリアさんのことも抱きしめてるの…?


臣「□□…?」
□「…っ」


どうして?

そんなこと、わかってたことなのに…

どうして今更、こんな気持ちになるの…?


□「ごめん、帰るね…。」
臣「□□…!」


あたしは部屋を飛び出して、急いでエレベーターに乗り込んだ。


もう何も考えたくない。
嫌だ。


.


.


.



□「はぁっ、はぁっ、りゅぅぅ…っ///」
隆「□□、どうしたの?今日すげぇ激しい///」
□「もっと、もっとなの…っ///」
隆「わかったから///」


その日は、朝まで何度も、隆二を求めてしまった。


隆「□□、可愛い…、ほんとに///」
□「りゅぅ…///」
隆「愛してるよ///」
□「あたしも、愛してる///」


隆二に愛されてると、すごく安心する。

ずっとこの腕の中に、いたくなる。


そうだよね…。

ここがあたしの帰る場所だよ。


臣の腕じゃない。

隆二だもん。




……それからあっという間に一週間が経って。

隆二がいなくなる日がやってきてしまった。


隆「明日から二週間も会えないのか…。」
□「うん…。」
隆「さすがに寂しいな…。」
□「寂しすぎるよ…、泣きそうだもん…。」
隆「……かわい…///」


隆二は困ったように笑って、あたしにキスをくれた。


□「寂しいから、今日はいっぱい抱いてね?///」
隆「今日に限らず、□□がいっぱい抱いて欲しいのはいつものことだろw」
□「そうだけど!///」
隆「ほんとに俺のこと大好きなんだからw」
□「そうだよ、大好きだよ///」


離れたくない。

ずっとそばにいてほしい。


□「りゅぅについていきたい///」
隆「そしたら臣が困るだろw」
□「…っ」


臣の名前なんて、今は聞きたくない。


隆「わっ、□□…!///」


……ちぅっ、…ちゅ、ちゅ、…ぺろ…っ、れろぉ…っ


隆「ちょ、待っ…、んん…っ///」


あたしはあっという間に隆二を襲って、隆二の上に跨った。


□「…挿れて…い…?///」
隆「□□、エロすぎ、///」
□「…きら…い…?」
隆「……すげぇ好き、///」


そう言ってくれた隆二は、あたしの腰をグイッと掴んできて…


ぐちゅぷぅぅっ!!


□「あぁんっ!やぁっ、深い…っ!///」


奥の奥まで隆二を感じて、強い快感に思わず身震いしてしまった。


隆「やじゃないでしょ…?こんなにぎゅーぎゅーしてんだから。」
□「あっ、あっ、だめぇっ!///」
隆「ほら、悦んでるよ…?」
□「やっ…、気持ちぃっ!あぁんっ!///」


ズプッ!ぐちゅっ!ずちゅぅっ!


□「やぁっ、おっきぃ!すごい…っ!///」
隆「気持ちぃ?」
□「すっごい気持ちぃよぉっ、もっ、だめぇっ///」
隆「じゃあもっとしてあげるね。」
□「!!!」


隆二の容赦ないピストンに、あたしはあっという間に果ててしまって…。


でも少し休めば、また欲しくなって。

いつもその、繰り返し。


何度だって飽きもせずに、一つになる。


隆「……ん、おはよ…。」
□「ふふ、おはよ///」
隆「…っ、ん…っ、□□…?///」
□「はぁっ、あっ、…んんっ!///」


夜が明けて、朝になったって、そう。


隆「はぁ、やべ…、ほんと気持ちぃ///」
□「うん、もう離れたくないよ…///」
隆「ずっと繋がってよっか///」
□「うん///」


あたし達は時間が許す限り、ギリギリまで身体を繋いでいた。


でも最後は、隆二がたっぷりとあたしの中に、注いでくれたの…。


隆「□□…、浮気すんなよ…?」
□「えへ、なぁにそれ、するわけないでしょっw」
隆「だって二週間も会えないからさ。」
□「りゅぅだって!浮気したらやだよっ?」
隆「するわけねぇだろ。俺の辞書に浮気なんてねぇっつーのw」
□「あははは♡」


そうだよね。
隆二がそんなこと、するわけない。

あたしだって同じだよ。


こんなにこんなに、隆二のことが大好きなんだから。


□「りゅぅ、愛してる///」
隆「俺も愛してるよ。」
□「行ってらっしゃい。」
隆「行ってきます。」


最後に少し長めの、甘い甘いキスをして…

あたし達は、別れた。


……この後に、運命の歯車が狂い出すことなんて、何も知らずに…。














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