連立の命(れんりのいのち)
第12章 《第12章》
ライオンの夢にどんな意味があるのか全く分からないまま、倖と雅治が南アフリカに渡る日が来た。
「雅治君、南アフリカってどんなところかしら。お母さんはすぐに見つかるかしら……」
倖は不安だった。
ユンカ達の母親がすぐに見つかるのだろうか。それにもまして、自分と雅治の事を理解して、許してくれるのだろうか。それより前に、自分たちのこと自体を受け入れてくれることが可能なのだろうか。
そして、なによりユンカ達の母親の心を少しでも穏やかにして、この先の人生を前向きに生きてもらえるような関わりが、はたして自分に出来るのだろうか。
倖はそんな事ばかりを考えて不安になっていた。
雅治も同じだった。どこから話せばよいのか、どんなふうに話せばよいのか。
雅治には本当のところ全く分からなかった。パックスの夢を見て、自分の直感を信じてここまで来たが、果たして本当にこれでよかったのか。
しかし、これだけは言える。あのときパックスが自分に夢で言った言葉は真実に違いない。パックスとユンカの母親に会いに行くことが、自分と義姉に出来る、たった一つの償いだという事。
それは、とても怖くて辛いことだが、それを乗り越えなければパックスたちの母親も、自分たちも本当の意味で前を向いて生きて行くことが出来ない。
飛行機のエンジン音は、そんな二人の不安な気持ちをさらに不安にさせた。どうか無事に南アフリカに到着しますように。
二人は祈るように静かに目を閉じ、ユンカとパックスの居る左胸に手を置いた。
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