妖怪伝奇帖~浅篠原陰陽師秘録~
第1章 第壹幕「亊之始」
「……うむ……くくく…あぁ、そうだ。もう直始まる。」
社長室のような場所。照明を殆ど落としているのか、かなり薄暗い。豪奢な机に据えられた黒い革製のチェアには、男が腰を据えている。
「……うん?……彼らが障害になるか、と……厭々、“障害になって貰わなければ意味が無い”のだよ。此れは然う言う計画だからね。」
男は電話で何やら話している。40代前半だと思われる精悍な顔には、時折無気味な笑みが顕れる。
「兎も角、家の可愛い娘にも頑張って貰うのだ。失敗する筈が無い……」
然う言って男は受話器を置く。足を組み椅子に凭れ掛かった男の顔は、何とも無気味な表情をしている。
「く、ふふふ……」
喜んでいるのか、悲しんでいるのか、其れとも怒っているのか、厭、楽しんでいるのかも知れない。喜怒哀楽全てが入り混じった顔で、男は静かに笑っていた。
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