◇「お返しよろしくねーー♪」
男「やったー!サンキュー!」
男「これで一個ゲットできたぁ!」
◇「あはははw」
今年のバレンタインは
〇〇とたくさん作りすぎちゃったから
学校で配っても配りきれなくて
塾の男子にもおすそ分け。
玲「それにしてもラッピングが…義理感、満載。」
◇「何よ。文句あるのー?」
玲於が不満そうに言ってきた。
玲「お前、本命の男はいないの?」
◇「えっ…」
ドキッ。
すぐに頭に浮かぶ、大好きな先生。
◇「むふふ…♡」
早く渡したいなー♡
玲「おい、人の話聞いてんの?」
◇「ああ、何だっけ。」
玲「あのなぁ!」
玲於が私の頭をガシッと掴むと
その手を誰かがガシッと掴んだ。
玲「いて…っ」
顔を上げると、玲於の後ろに
背の高い登坂先生。
臣「何やってんだよ。授業終わったんだから早く帰れ。」
玲「ちっ…」
臣「あぁん?お前今、舌打ちした?」
玲「してねぇよっ!」
臣「ふんっ」
玲於はよろけて、そのまま帰って行った。
あいつ、いっつも偉そうにしてるけど
登坂先生には逆らえないんだ。
臣「何笑ってんの。」
◇「早く帰りたいなって思って♡」
臣「ん、待ってろ。」
◇「はい♡」
車のキーを受け取って
先生の仕事が終わるのを待つ。
今日はこのまま先生のおうちにお泊まり。
ケーキとチョコレート、渡すんだもん♡
わくわくソワソワ、待っていたら…
〇〇から嬉しい報告がLINEで届いた。
『悟空さんに渡して、告白したよ♡』
◇「きゃーーー♡」
ちゃんと告白できたんだ!
__バタン。
臣「何一人で騒いでんだよ。」
◇「あ、先生!聞いて聞いてーー♡」
私まで嬉しくて、すぐに報告。
臣「ふーん、で?」
◇「え?」
臣「あいつも返事したの?」
◇「あ、ううん。返事はホワイトデー?にもらうみたい。」
臣「……引っ張るねぇ…」
◇「……」
確かに。
引っ張りながら、どうせ今頃またエッチのレッスンしてるんだろうな。
全くもう、悟空さんってば。
◇「うふふー♡」
臣「なんだよ、ご機嫌だな。」
◇「だって…♡」
早く先生の家に着かないかなー♡
なんて、助手席でウキウキるんるんしていたら…
臣「何してんだよ、行くぞ。」
◇「……」
先生のマンションに着いて…
先生が後部座席から取り出したのは…
◇「ねぇ先生、なにそれ…」
臣「あ?」
大きな紙袋。
中身は見なくてもわかる。
臣「ほら、行くぞって。」
動こうとしない私の肩を、先生が強引に抱いて。
◇「…っ」
その隙に、その紙袋を奪ってやった!!
臣「あ、おい!」
◇「!!!」
やっぱり~~!!!
何これ!!すごい量なんだけど!!!
◇「……」
臣「……」
むすぅぅぅっとしてる私を
先生が呆れて見てる。
臣「ほら、行くぞ。」
強引に部屋まで連れていかれたけど。
◇「……」
むすぅぅぅ。
ソファーの上で、体育座り。
臣「何なのそれ。」
◇「……」
反抗心の、現れです。
……ムカつくから…全部見てやる!!
臣「あ、勝手に開けてやがる。」
そんな言葉も聞こえないふり。
何個あるんだか、山のようなチョコを仕分けすると…
その7割が本命と見た!!
◇「はぁ……」
嫌になっちゃう。
臣「なーにため息ついてんの。」
頭なでなでしてくれたって、ダメだもん…っ
◇「なんでこんなにもらうの…」
臣「俺に言われても…」
◇「多すぎ…」
臣「岩田なんて俺の倍もらってたよ?」
◇「岩田はどうでもいいの!」
臣「…呼び捨てかよww」
先生がお腹を抱えて笑ってる。
◇「先生、もらいすぎ!」
臣「いや、だから俺に言われても…w」
◇「だって…受け取ったのは先生じゃん。」
臣「お前だって配ってたじゃん。」
◇「あれは…っ」
どう比べたって、全然違うもん!
◇「あんなのただの余り物だもん!義理だもん!」
臣「……」
◇「でも…これはどう見てもほとんど本命だもん!」
臣「……」
こんなこと言ったら…
くだらないヤキモチ妬いて、子供みたいって…思われる?
◇「…もらう時…告白とか…された?」
臣「……あーー…、うん。」
◇「!!!」
されたの!!??
◇「なんて言われたの!???」
臣「いや…、別に…普通に…」
◇「普通に、何!!!」
臣「好きです、って。」
◇「!!!」
……ショックすぎて、言葉が出ない。
◇「…それで…なんて、返事…したの…?」
臣「返事っつーか…、ありがとーって、チョコもらっただけ。」
◇「ありがとう?!!」
臣「…他になんて言うんだよ。」
◇「…っ」
ありがとうって何!!
そんなの、嬉しいみたいじゃん!!
臣「なーにをお前はそんなにふくれてんの?」
◇「…っ」
なんで…
私の気持ち、わかってくれないの…?
臣「なんで泣きそうになってんの?w」
◇「なんで笑ってるの!」
臣「だって…w」
先生は呆れたように、私を抱き寄せた。
◇「こんなことしたって…ダメだもん…っ」
臣「んーー、」
チュッ
おでこに触れた、唇。
◇「そんなのも、ダメだもんっ」
臣「んーー、」
チュッ
今度はまぶたに落ちてきた唇。
◇「ダメ、だもん…っ」
臣「んーー、」
チュッ
今度は、ほっぺ。
◇「……///」
臣「ん、」
チュッ
最後は、唇。
臣「機嫌、直った…?」
◇「……///」
……ずるい。
◇「…告白…されないで…!」
臣「無茶だな…w」
◇「ありがとうとか言わないで!」
臣「…じゃあ…なんて言うの?」
◇「俺には大好きな彼女がいるから、告白されても全然嬉しくない!望みゼロ!今すぐ諦めろ!…って、言って!」
臣「ぶっ、鬼かよww」
◇「鬼でいいのっ!」
臣「……」
わがままだって、わかってるけど…
◇「私以外の子に…優しさなんか…見せないで…」
臣「……」
最後にポツリ、そう言うと…
また優しく、腕の中に抱きしめられた。
臣「俺の大事な彼女が、他の女に告白されるとヤキモチ妬いてふてくされて泣いちゃって、手に負えないんだけど…」
◇「…っ」
臣「それでも俺、そんな彼女が可愛くて仕方ないくらい好きだから…ごめんね?」
◇「…っ」
臣「って、言うわ。」
◇「////」
何それ…
臣「これ…、全部持って帰る?」
◇「…っ」
チョコがどっさり入った、紙袋。
◇「…いらない…の?」
臣「いらないでしょ。」
◇「……持って…帰る。」
臣「はいw」
持って帰って、お父さんにでもあげよう。
臣「で?」
◇「え?」
目が合って、数秒…見つめ合う。
臣「早くよこせよ。」
◇「???」
先生が手を出してきて、催促のポーズ。
臣「まさかお前、義理は配っといて、俺にはないわけ?w」
◇「!!!」
忘れてた!!
◇「あるよ!!あるに決まってる!///」
慌てて紙袋を開ける。
先生に喜んでもらいたくて
毎日練習して、一生懸命作ったんだから。
◇「はい、ハッピーバレンタイン♡♡」
臣「おわ、すっげーじゃん!!」
箱を開けると、先生の目が輝いた。
◇「すごいー?すごいー?♡」
臣「すげーよ!」
◇「えへへ///」
頑張って良かった♡
すっごく嬉しい♡
ピポピポ♪
臣「ん…?」
先生の携帯が鳴って…
LINEかな?
臣「ぶっww」
画面を開いて、吹き出す先生。
◇「どうしたの?!」
私もその画面を覗けば、
「〇〇からもらったバレンタイン♡♡すごくない?上手でしょ!天才だと思わない?」
それは、悟空さんからのメッセージで、写真は今まさに目の前にあるケーキとチョコレート。
臣「隆二とお揃いかよーーww」
またお腹を抱えて笑う先生。
◇「だって…一緒に作ったんだもんw」
臣「ほんと仲良いね、お前らw」
そう言って笑いながら、先生が周りのチョコを一つ手にとって、口に入れた。
◇「……」
ドキドキドキ…
臣「ん、美味いじゃん。」
◇「////」
嬉しい!!やったぁ!!♡♡
ティロリロリロ♪
臣「ん?電話まで来た…」
◇「えっ…」
先生がスマホを耳に当てると、
私にまで聞こえて来るくらい、嬉しそうな悟空さんの声。
隆「ねぇねぇ、見たぁ?♡」
臣「見た。」
隆「うん、既読になったから電話しちゃったw」
臣「なんなんだよお前はw」
隆「だって嬉しくってさ~~///」
臣「はいはい、良かったねーー」
隆「ケーキもチョコもめっちゃ美味いの!」
臣「ふーん、ケーキはまだ食ってない。」
隆「へ?」
臣「お揃いみたいよ、俺たち。」
隆「あ、一緒に作ったって言ってた!」
臣「うん。今もらったとこ。」
隆「そうだったんだ!あ、一緒にいんの?」
臣「うん。」
隆「俺も今一緒~~~♡」
臣「じゃあ電話してくんなよw」
隆「だって〇〇、寝ちゃったんだもん。」
臣「へ?こんな時間に?」
隆「ああ、…えーと、うん、まぁ…///」
臣「……ああ、そういうことね。」
隆「そういうことって、なんだよ///」
臣「そういうことだろw」
隆「////」
臣「じゃあ切るぞ。」
隆「え、待ってよ!臣と話すのも久々なのに!」
臣「お前がいなかったからな。」
隆「そうだよー!ね、ね、聞いてよ。」
臣「なんだよ。」
隆「〇〇ってばさ、俺が他の男に義理チョコあげちゃダメーーって言ったら…」
臣「……」
隆「律儀に守って、誰にもあげなかったんだって、へへっ♡」
臣「ふーーん…」
隆「超可愛くない?///」
臣「……」
隆「俺、義理でもやだもん。他の男が〇〇のチョコ食うなんて。」
臣「……」
隆「でも…今年もらったのは俺だけ~~♡」
臣「はいはい、良かったね。」
隆「でさ、」
臣「もう切るぞ。」
隆「えーーーー!冷たい!」
臣「俺だってイチャイチャしてぇんだよ!」
隆「えっ///」
臣「じゃーな。」
隆「…邪魔して…ごめん、///」
臣「おう。」
電話を切った先生は、そのままスマホを放り投げて。
◇「////」
私は最後のセリフが嬉しくて…
◇「……ぴと♡」
先生の腕に、くっついた。
臣「なんだよ。」
◇「イチャイチャ、する♡」
臣「……」
あれ…?
臣「〇〇ちゃんさー、」
◇「うん?」
臣「隆二以外の男に、あげなかったんだって。」
◇「あ、うん。悟空さんに禁止されたって言ってた。」
臣「……」
◇「……??」
先生が私の顔をじっと見て、ほっぺたを引っ張ってきた。
◇「なにー??」
臣「俺も来年から禁止にしよっかな。」
◇「え??」
臣「他の男に配るの、義理でも禁止。」
◇「えっ///」
何それ何それ!!!
臣「…って、なんでそんな嬉しそうなわけ?」
◇「だって!ヤキモチ?!///」
臣「いや、それほどじゃないけど…」
◇「ええっ!」
臣「まぁ、でも…いい気分でもないし…」
◇「////」
うそ…っ
すごく嬉しい。
だってほんとは、禁止されてる〇〇が
ちょっと羨ましいな、なんて…思ってた。
だってそれって…
束縛、っていうか…愛情の一つだし。
他の男なんて見るな!
俺だけ見てろ!
…っていう、メッセージな気がして。
いいなぁって…思ってたんだ。
◇「私も、来年から禁止?」
臣「うん、そうする。」
◇「////」
臣「だからなんで嬉しそうなんだよ、変な奴w」
◇「ね、先生っ♡」
臣「なに。」
◇「もっと禁止事項、作って!♡」
臣「はぁ?w」
◇「えへへ♡」
もっと、先生に縛られたい。
先生だけのものだって、思わせてほしい。
臣「じゃあねぇ…」
少し考えたあと、ニヤッと口角を上げた先生。
臣「俺がしようとすることに、逆らうの禁止。」
◇「うんっ♡」
臣「え、いいの?w」
◇「うんっ♡」
禁止されちゃった♡
もうなんでも嬉しい♡
◇「先生に逆らわない♡」
臣「……」
◇「なんでも先生の言うこと、きくーー♡」
先生の首に腕を絡めて、ぎゅっと抱きついた。
◇「先生、だーいすき♡」
臣「ん、いい子…w」
……ドサッ
◇「…っ」
あれ…?
先生が、私を見下ろしてる。
臣「今日さ、なんかエロい格好してんね?」
◇「…っ////」
先生の瞳に、妖しさが差して、ドキッとする。
だって今日は…
〇〇も隆二さんのためにミニスカートで行くって言ってたし…
私も頑張っちゃおうって…気合い入れて…
臣「わざと…?」
◇「////」
私の考えてることなんて、お見通しみたいな余裕の笑み。
でも、
その表情が余計に私をドキドキさせるの。
◇「わざと…だよ?///」
そう答えれば…
臣「……イイね。」
なんて、またニヤッと笑って
太ももを滑る、先生の指先。