Love Addict
第5章 ー優しくしないでー
〇〇を抱いた次の日も
俺は英語準備室に顔を出した。
〇)また来た。
臣)毎日来るよ。
〇)暇なのね。
臣)……
〇)若い時間が勿体無いわよ?
臣)〇〇に使う時間は
何一つ勿体無くなんかない。
〇)……
臣)一番大事な時間だから。
〇)……
昨夜あんなに熱く抱き合ったのが
夢だったんじゃないかと思うほどに
〇〇はいつも通りで
俺の言葉なんて聞こえないフリをして
また背を向けた。
臣)〇〇…
〇)……
臣)〇〇…
〇)……
臣)なんで…返事してくんないの。
〇)「先生」。
臣)…っ
そうだった。
昨夜は名前で呼んでも怒らなかったのに…
俺のことも…名前で呼んでくれたのに
臣)学校だから?
〇)……
臣)……
〇)……
臣)先生。
〇)なに?
臣)……
〇)……
臣)好きだよ。
〇)……
わかってる。
好きだなんて何度伝えたって
貴女は何も言ってくれない。
俺だけが
こんなに好きなんだってわかってる。
臣)先生は…さ、
〇)……
臣)なんで…笑わないの?
〇)……
「絶対笑わないクールビューティー」
隆二から聞いた〇〇の代名詞。
俺だって…
一度も見たことがない。
〇〇の笑顔。
見たことがないどころか…
公園で会う〇〇は…いつも泣いていて…
臣)笑うこと…ある?
〇)……どうだろう…
臣)お笑い見てる時とか。
〇)見ないからわからないわ。
臣)誰かが面白いことした時とか。
〇)…そんな場面に遭遇しないもの。
臣)……
〇)……
笑った顔が見たい。
こんなに綺麗な〇〇が笑ったら
どんなに可愛いんだろう…
臣)無理にとは言わないけど…
〇)……
臣)いつか俺に見せて…
〇)……
臣)先生の笑顔。
〇)……
俺が〇〇の頭を撫でると
〇〇はゆっくり顔を上げた。
〇)登坂くんは…
すごく優しく笑うのね。
臣)え…?
〇)……
臣)……
〇)…大人を…子供扱いしてるの?
臣)えっ…
俺は咄嗟に〇〇の頭から手をよけた。
臣)……ごめん、無意識。
〇)無意識に子供扱い?
臣)……
〇)……
臣)ごめん……
〇)ふふ…
〇〇の表情が少しだけ柔らかくなって
でもそれはやっぱり
「笑顔」からは程遠かった。
臣)先生…
〇)……
臣)笑ったら絶対可愛いよ。
〇)…なぁに、それ…
臣)俺が保証する。
〇)……
臣)……
〇)変なの……
そう言った〇〇の表情が
また少しだけ和らいだ気がした。
ーいつか貴女を笑わせたいー
貴女の笑顔のためなら
俺はなんだって出来る気がする。
何も知らないあの時の俺は
ただ純粋にそう思っていたんだ。
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