Love Addict
第7章 ー消したい悲しみー
隆)今日カラオケ行かね?
臣)ごめん。放課後はちょっと。
隆)なんだよ。
最近付き合いわりぃじゃん。
臣)うん…
隆)この前言ってた女?
臣)まぁそんなとこ。
隆)付き合ってんの?
臣)いや…?
隆)……
臣)……
隆)前話した隣のクラスの子さ、
諦めないってよ。
臣)……は?
隆)断られたって言ったんだけど
彼女がいないなら
私にもまだチャンスあるもん!って。
臣)……
隆)可愛いよねw
臣)……
隆)一回くらい遊んであげれば?
臣)やめとく。
隆)……
他の女なんか本当に興味がない。
俺が好きなのは
こんなに気になるのは
〇〇だけだから。
そして今日も俺は
一番端のあの部屋へ向かう。
今日は人もいないし廊下からでいいか…
コンコン。
ガラガラッ
ドアを開けて中に入り
パーテーションの奥を覗くと
俺の足音に驚いたのか
〇〇がビクッと振り返った。
〇)直人さん?!
臣)……
〇)あ…っ
俺の顔を見てハッとした。
臣)誰それ。
〇)……
臣)……
〇)びっくり…した…
臣)……
〇)廊下から来るなんて…
珍しいのね。
臣)……
慌てて取り繕う〇〇の腕を掴んだ。
臣)誰と間違えたの?
〇)……
臣)ナオトさんって誰?
〇)……
臣)……
〇)……
〇〇が何も答えないから
俺は腕を離してソファーに座った。
臣)俺しか来ないんじゃなかったのかよ…
不満の色を隠せずにぼそっとそう言うと
〇〇はまた
俺の前にお茶を置いてくれた。
〇)毎日来るのは登坂くんだけよ。
臣)……
〇)……
臣)そのナオトって奴はたまに来んの?
〇)…さぁ。
臣)……
歯切れの悪い〇〇の手を掴んで
隣に座らせた。
〇)ちょっとぼーっとしてたの。
…ごめんね?
臣)……
繋いだ手を離そうとしない俺に気付いて
〇〇がほどこうとするけど
離したくない。
〇)……
臣)……
昨夜はあんなに熱く抱き合ったのに
この部屋では
貴女はそんな気配を微塵も感じさせない。
「先生」の仮面を絶対に外さないんだ。
その仮面に少しでもヒビを入れたくて
俺は繋いだ手を
さらにギュッと握った。
臣)…好きだ。
〇)……
貴女に聞きたいことは山ほどある。
貴女の涙が頭から離れなくて…
何から聞いていいのかわからない。
聞くことで貴女を傷つけてしまわないか
俺は絶対に貴女を傷つけたくない。
泣かせたくない。
ただ…笑ってほしいんだ。
臣)……
何から口にしていいのか
戸惑っている間に
先に口を開いたのは貴女だった。
〇)登坂くんは…
いつでも真っ直ぐね…
臣)……
俺に握られている手に視線を落として
貴女は小さく呟いた。
〇)優しくて…真っ直ぐで…
臣)……
〇)なんだか眩しい…
臣)……
〇)……
臣)俺には…
〇)……
臣)〇〇の方が眩しいよ。
〇)……
こんなに好きで…
何度抱いたって…
手に入らない幻のようで…
でも恋い焦がれて追いかけてしまう。
臣)〇〇が好きだよ。
〇)……
臣)……
〇)…私は……
名前で呼んだのに
初めて〇〇が会話を続けてくれる。
〇)そんな風に想われる価値なんてない。
臣)……
〇)もう…私に構わないで。
臣)嫌だ。
〇)……
臣)……
〇)ここへ来るのももう終わり。
臣)嫌だ。
〇)……
臣)……
〇)登坂くんは…すごく優しいから
同じ年代の可愛い子がいくらでもいるでしょう?
臣)……
〇)だから…
臣)嫌だ!!
〇)…っ
俺は〇〇を抱きしめた。
臣)俺が好きなのは〇〇だって
言ってんじゃん…
〇)……
臣)俺の気持ち…信じられない?
〇)…そうじゃ…なくて…
臣)……
〇)……
華奢な身体をひたすら抱きしめる。
この想いが伝わるように。
そして…
〇〇からもう余計な言葉が
飛び出さないように…
〇)登坂くんは…
臣)名前で呼んで。
〇)……
臣)夜は…呼んでくれるじゃん。
〇)……
臣)広臣…って…
〇)……
臣)……呼んでよ…
〇)……
臣)……
情事のさなかに
俺の名前を呼んでくれる
熱くて甘い貴女の声が忘れられない。
〇)……
臣)……
〇)広…臣…
臣)…っ
本当に…呼んでくれた…
俺の胸から離れた貴女は
思わず泣きそうになる俺の顔を見て
そっと手を伸ばした。
白くて柔らかな手が
俺の頬を包む…
〇)広臣には…未来があるでしょう?
臣)……
〇)…だから……
臣)……
〇)こんな所にいちゃダメよ……
臣)……
〇〇が何を言ってるのかわからない。
臣)俺は貴女が好きで一緒にいたい。
〇)……
臣)教師と生徒って立場がダメだって言うなら
早く卒業するから。
〇)……
臣)もしそれも待てないなら
学校なんて辞めて働くよ。
〇)…バカなこと…言わないで…
臣)本気だよ。
〇)……
臣)俺は…貴女が好きなんだ。
〇)……
臣)貴女以外…欲しいものなんてない。
〇)……
だから…
どうしたら振り向いてくれるのか…
教えてよ。
〇)貴方にはまだまだ長い未来がある。
臣)……
〇)それを私なんかのために棒に振らないで。
臣)……
〇)私は…あなたと一緒には
生きていけない。
臣)どうして!!
〇)……
臣)俺が…子供だから…?
〇)……
臣)……
こんなに好きなんだ。
方法なんていくらでもある。
何を犠牲にしたって俺は貴女といたいんだ。
〇)ダメ。
臣)…っ
〇)今日はもう帰って?
臣)……
〇)……
臣)……
俺の手をほどいて
〇〇は立ちあがった。
臣)全然…わかってない。
背中を向ける〇〇に
言葉をぶつける。
臣)貴女は全然わかってない。
〇)……
臣)俺がどれだけ貴女を好きか
全然わかってないよ。
〇)……
臣)明日…
〇)……
臣)また来るから…
〇)……
それだけ伝えて俺は部屋を後にした。
繋いでいた手の熱さが…
抱きしめていた貴女のぬくもりが…
まだ消えない。
あの部屋で初めて
「教師」と「生徒」じゃなく
いられた気がする。
生徒じゃない。
子供じゃない。
俺を…
ー1人の男として見てよー
ああ…今夜も俺は
この焦がれた感情を抱いて
夜を走るんだ。
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