Love Story~斉藤一
第6章 「新撰組の思惑」
翌日の京都の町には、昨晩から明朝におきた9人の男の無惨な殺人事件に大騒ぎになっていた。そのためか、この日の見廻りに来ていた第10番隊組長、原田左之助ら一行は、京都の人々から不審な目で見られた。
「新撰組・・・彼らのせいで京の町は血で汚されてしもうた・・・」そんな声が原田の耳にも届いている。
「まったく!俺たちの活躍で焼け野原は免れたんだって、それを忘れてもらっちゃ困るぜ!」原田は気に入らなそうに顔をゆがませた。
「そんなに怒った顔ばかりを見せていると、本当に新撰組が悪行重ねてばかりいる悪い連中だって思われちまうぞ。」
原田の少し前を歩いていた、新撰組副長、土方歳三はそう言って振り返った。
「まったく!」そう言って持っていた槍をドンと地面に突き刺した原田だった。宝蔵院流の槍の名手である原田佐之助は新撰組の十番組長として知られた。主だった新選組の戦闘には必ず彼の活躍が挙げられている。
土方歳三も、彼と斉藤一をよく重宝していた。そのふくれっ面の原田を見て土方は笑った。そんな原田の隣には、昨日の出来事を報告した斉藤が無言のまま歩いていた。
「齋藤の話が本当なら、殺された奴らはみな同じ酒場で飲んでいたらしい。それが全員殺された場所は三条河原だ。俺は今から齋藤と共にその場所へ行ってくる。」土方がそう言うと、見廻り組の隊列から離れていく二人だった。
「副長!俺も連れて行ってくれ!」原田はそう土方に願い出た。
「お前は見廻りが終わったら、屯所に帰れ。話がややこしくなるだけだ。」そう吐き捨てるように言うと土方と齋藤は、そのまま京都の町に消えていった。
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