DEAREST
第3章 MONDAY
「・・・お前・・・私を知っているのか・・?」
女は訳も分からず首を傾げ、独房の入り口、冷たい格子の隙間からこちらを伺う一対の碧の瞳に問う。
どうやらラトのことは記憶にないらしい。
しかし、ラトの方は違う。町中で自分に見事な肘鉄を入れたこの吸血族をしっかりと記憶していた。
「お前こそ…人の横っ腹力一杯殴っといて俺のこと忘れたのか?」
質問を質問で返され戸惑う女に、ラトは喉奥で笑いお忍びには定番の頭をすっぽりと覆う布を髪に滑らせ頭から取ると真っ直ぐにシルエを見据える。
現れた顔を訝しげにしばらく見つめた後、女ははっと肩を揺らした。
「…お前は…あのときの神父か…」
「残念。俺まだ神父見習い」
「…見習いが私に何のようだ?」
女は更に、首を傾げた。二人を沈黙が包む。
最初に沈黙を破ったのはラトだった。
「聞いてみたかったんだ。」
「……………は?」
「………ずっと、聞いてみたかった。」
「…………………何を?」
それはラトがずっと解らなかった事。
「何故吸血族は、人間を殺すのか。」
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