一途なモテ不幸ヒーローの恋愛サクセス戦記 宮野蹴鞠(著)
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発行者:宮野蹴鞠
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ジャンル:恋愛
シリーズ:一途なモテ不幸ヒーローの恋愛サクセス戦記

公開開始日:2017/03/26
最終更新日:---

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一途なモテ不幸ヒーローの恋愛サクセス戦記 宮野蹴鞠(著) 第7章 6 凱旋
 戦後指示を終えて、ようやく休息を取る事が出来た。

「ラサも、これで任務達成よね」

「そうだな」

 傷の手当てを受けた後も、暫く安静が必要なオレに、リームは熱心に世話を焼いてくれている。
 今は二人きりだ。
 オレは安静の身だがな。

「城に戻れば、しっかりとした恩賞が出るとは思うけど‥‥。その前に‥‥その‥‥」

「どうした? 歯切れが悪いな」

「わたくしからも‥‥褒美を取らせて差し上げますわ‥‥」

「それは光栄だな」

 ベッドから半身を起こしたオレを、じっとみつめるリーム。

「わ、わたくしと‥‥こ、婚約なさい!」

 突然の求婚、呆気にとられるオレ。

「き、救国の英雄には、当然の権利ですわ! そうすれば‥‥凱旋にも箔が付くというものですし‥‥」

 いつもの調子でまくしたてようとして、尻窄みになるが、それでも視線は外さないリーム。
 ‥‥。
 暫しの沈黙。

「‥‥嬉しいよ」

 オレの言葉に、表情を明るくするリーム。

「一国の、こんなにも美しい姫君の求婚を受けるとは、本当に光栄の至りだ」

「ほ、褒めても何も出ませんわよ?」

 真剣に言葉を選ぶオレに、少し安堵したのか、以前オレの言った台詞を返してくるリーム。

「だが、すまない‥‥ オレには心に決めた人がいるんだ」

 ‥‥。
 再び沈黙。
 瞳が潤むのが分かる。

「いずれは一国の主になれる二度とない機会をあげましたのに、きっと後悔しますわよ‥‥」

「そうだな‥‥」

 苦笑するオレに抱きつき、口づけをするリーム。
 そして、すぐに身を翻す。
 キラキラとした雫が飛び散る。

「それはアイザスを救った英雄への褒美です! 今のは国のことを、政治のことを考えての申し出。べ、別に好きとかそういうのじゃないんだから‥‥!」

 そのまま振り返ることなく、足早にリームは立ち去った。

*

 翌日、オレの安静が解け、アイザス城への凱旋。
 帝国軍を退けた義勇軍は、アイザスの民に暖かく迎えられた。

「義勇軍の働きには感謝している。望む者は、王国正規兵として取り立てよう。また、戦死者の遺族への恩賞も約束しよう」

 登城した義勇軍を労うアイザス王。

「そして、義勇軍司令官ラサよ」

「ハッ」

 名指しで呼ばれ、片膝をつく。

「そなたをアイザス将軍職として迎え入れよう」

「有り難き幸せ、粉骨砕身でアイザスに仕えます」

*

 多額の褒美を受け取ったオレは、まだ体調の優れないエフィの見舞いへ向かった。

「出世したそうね、おめでとう」

「ああ、エフィの元にも辞令が来るはずだぜ」

 オレは見舞いの花束を花瓶に移しながらそう答えた。
 報酬もいつも通りの折半だ。

「まだ調子悪いようだから、無理はしないようにな」

「ええ、そうさせてもらうわ。貴方の傷はもういいの?」

「ああ、ほぼ完治したぜ」

 肩を回してみせる。

「ところで、貴方がリーム姫の求婚を断ったって噂を聞いたのだけど‥‥」

「ん‥‥噂になってるのか?」

「何を考えてるのか知らないけど、噂が本当なら、随分と勿体ないことをしたわね」

「そうかもな‥‥」

 苦笑するオレに、エフィは笑顔を見せたのだった。

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