隠されし座・京都テクスト
第1章 京都府向日市物集女町・第二回生病院
今出川通り烏丸・同志社大学
ダイアナ妃は、ボクが昼寝をしている間に、京都中をぐるりと一周してイギリスに戻った。
何も起こらなかった。1986年の事だ。
ボクは何も企んではいなかった。それが証明されたのだ。
ボクの文章はボクの生活を含んでいる。生活が文章を含む前に。
文章が生活を規定しつつさえある。
ボクは知っている。
火のように生きながら、水のような文章を残した人々の事を。水のように生きながら、火のような文章を残した人々の事を。
しかし、今のところ文章がボクの生活を方向づける。
ボクは小説の中で日常を過ごす。
洗濯する事、食事をする事、生ゴミを出す事、夜中にゴムボートを膨らませる事、膨らませたボートに水を張る事、水の中に浮かぶ事。
どれもこれもが、小説に書いた通りだ。
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