魔怪探偵『ユート』
第4章 第四章:西洋人形
静かに佇むようにガラスケースの中に収められる人形は、瞳に何も写していないと言えるような透明な瞳をして優人の方へと向けられていた。
だが、優人には無闇に姿を晒しておきたくない気分が起きており、古布を急ぐかのようにガラスケースの上に被せて人形が見えないようにした。
優人「では改めて、今回の依頼に至るまでの経緯を教えてください」
菅野「はい・・・」
―――初めは娘が喜ぶだろうと思って偶々立ち寄ったアンティーク店で購入したものでした。
―――だけど、あんなことになるなんて……私も想像していませんでした。
【10日前】
人形をプレゼントしてからは娘はそれはもう大喜びでした。
オママゴトに使ったり、ベッドで一緒に寝たり、自分で手入れをしたりと大事にしていました。
そんな姿に妻も私も嬉しく感じれたものです……
ですが、それから3日後……異変はここから少しずつ起こっていたんです。
菅野・娘「ねぇママ、ちーちゃん夜に動かした?」
菅野・妻「え? さぁ……私はしてないけど?」
菅野・娘「おかしいなぁ…気のせいかな?」
菅野「どうかしたのかい?」
ちなみに、娘はその人形には『ちーちゃん』と名前を付けてました。
初めは朝聞く娘との会話の中で異変は薄々と現れていました。
菅野・娘「あ、パパ。実はね、舞美は昨日はちーちゃんを机の上に置いて一人で寝たの。だけど、ちーちゃんベッドに一緒に入ってたんだよ?」
菅野「ほぉ、不思議な事があるものだな」
菅野・妻「ふふふ、きっとそれは舞美ちゃんが寝るとき寝ぼけてちーちゃんを抱きしめた寝たからよ」
舞美「でも…ちゃんと机に置いてから寝たのを覚えてるよ?」
菅野「そういうのは“デジャウ”って脳がやってないことをやったことがあると錯覚する現象だろう」
舞美「ふ~ん、そうなのかなぁ」
この時は、何気ない会話で終わりました。
だけど、異変は日に日にはっきりとしていきました……
舞美「パパ、昨日の夜、私の部屋に入ったことある?」
菅野「どうしたんだいきなり?」
舞美「だってね、朝起きたら机に置いてあった教科書とかが幾つか下に落ちてたの」
菅野「知らないな~・・・お~い明美! 昨日の夜、お前舞美の部屋に入ったか?」
明美「いいえ~? 入っていませんよ?」
23