春を掴んでみたい・生まれ変わってみたい
第5章 栄治の歌
「彼女が欲しいって、そう思う事がそんなにいけないのかよ!」
両目から涙を流し、耐えられない自分への怒りが高まる。栄治はウクレレを両手に持つと地面に叩きつけて潰していく。潰さずにいられなかった。このウクレレは自分だと思っている。許せない、絶対に自分が許せない。
「ち、ちくしょう……ちくしょう!」
潰れていくウクレレが涙で見えない。栄治は泣きながら何回もつぶやいた。もう要らない、彼女なんかいらない。一生一人でいい、一人ぼっちで生きていけばいいんだ。誰とも恋愛しなきゃいいんだ。
「彼女が欲しいとか二度と思うもんか!」
潰れたウクレレの残骸が泣いていた。
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