SITIGMA Side-Koichi Vol.1
SITIGMA Side-Koichi Vol.1
成人向完結
発行者:とりさん
価格:章別決済
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ジャンル:その他
シリーズ:STIGMA

公開開始日:2012/05/10
最終更新日:---

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SITIGMA Side-Koichi Vol.1 第2章 1
 見おぼえのある男の人だな、って一しゅん、思って、すぐ、マンションのおとなりのおじさんだとわかった。まっ黒い、上等そう背広をきていて、シャツも灰色系。お父さんよりちょっと、年上の感じで、何だかこわい人、って、ぼく、最初引こしのあいさつに行ったとき、感じた。お父さんとお母さんは、このおじさんが好きみたいな顔をしていた。インテリだから。でも本当は少し、やきもちやいてると思う。週に何回か、大学で先生をしていて、本も書いていて、新聞にも文章がのることがある人らしい。英語の本のほんやくもしているって。お父さんとお母さんはこのおじさんと話したがるし、仲よくなろうとしているけど、相手にされないと、とても不満みたいだった。

 おじさんにはもう一つ特ちょうがあった。足が片方、あんまり動かなくて、歩き方で、遠くからでもあのおじさん、ってわかる。走るのもできないみたい。つえをもって歩いている。

 おじさんに引っこしのあいさつをさせられた時、おじさんはしゃがんで目の高さをぼくに合わせて、ぼくをじっと見て、笑って、頭をなでた。ぼくはそういうのがきらいで、すぐに逃げちゃうくせがあった。体を人に、特に大人の人にさわられるのがきらいだった。でもこのおじさんになでられたとき、ぼくは少し後ろに下がるとかもできなくて、されるままになでられてしまった。手をさし出されて、ぼくはあく手までしてしまった。目立たないようにしかたなくするんじゃなくて、自ぜんに手が動いてしまった。おじさんの手は大きくてあたたかくて、何だか必要以上に力が入っているように思えた。それ以来、ぼくはこのとなりのおじさんがこわかった。あいさつからこっち、話もしたことがない。遠くからおじさんが笑顔であいさつするのに、ちょっと頭を下げるくらい。

「幸一君。こんにちは」
 おじさんはやっぱり笑顔で、こしをかがめて、目の高さをぼくに合わせて、話しかけてくる。
「あ……こんにちは」
 ぼくはもじもじしながら、頭を下げた。おじさんと目を合わせないようにしているけど、すごく見つめられているのがわかって、なんだか落ちつかない。どきどきした。とうめいなまま、ほうっておいてくれればいいのに、どうしておじさんはぼくにこんなに近づくんだろう?
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