Happy Lovely
第2章 GAME
薬局地下にある研究室に、ムカツク男がいる。
野澤祐樹。
今年春に入ってきたまだ学生で新人の研究員だけど、コイツは一癖も二癖もある。
と言うか、研究室の人間は、どいつもこいつも胡散臭く、おかしな人が多いけれど、野澤と言う男は、その中でもずば抜けてヘン。
とにかく暗い。
挨拶しても返事がない。
そして、先生に頼まれて資料を渡しに行ってんのに、何か聞いても無視。
愛想も何もないんですけど!!!
院内には男の人は沢山いる。
勿論、先生は男の人が殆どだし、力仕事が多いから、若い男のスタッフは多い方だ。
でも、彼らはみんな愛想はいいし、優しいし、紳士的な人ばかりだと思う。
なのに…なに、この研究室。
研究員はクセある人ばかりで、院内のスタッフとは正反対。
『大目にに見てやってよ』
なんて、主任の松岡先生は言うけれど、野澤は無理!!
私、彼に資料を渡しに行く機会が多くて、多い時は一日に3回くらい研究室に行くけれど、もうその時は嫌味を言われ放し。
「また来たんですか?もうちょっと要領良く仕事して下さいよ」
「うるさい!!そんなこと言ったって、仕方ないでしょっ!!」
私の担当医である田中聖先生が適当なので、こういう要領の悪いことはちょくちょくである。
てか、聖先生も、私の身にもなってくれ…。
そんなこんなで、とにかく私は、野澤のことは嫌いだった。
☆ー―‐・・‥
季節外れの台風が来て、とにかくヤバイ感じだった。
朝はそうでもなかったのに、昼から風が少し強くなり、夕方には豪雨。
時計を見ると、もう19時回ってる。
でも外は大荒れの状態で、無事に帰れる気がしなかった。
「うわ、ヤバくね?これ、帰れねーじゃん」
私が窓から外を眺めていると、後ろで井ノ原先生が独り言みたいに呟く。
「美保子ちゃん、今日夜勤?」
「いえ、違いますけど…」
「そっかー…危ねーからさ、今日はココに泊まってった方がいいよ。セミナーで使う宿泊部屋も開放するからさ、相部屋になると思うけど…ま、遭難するよりかマシだな」
…台風で遭難て、あまり聞いたことがないけれど、でもこれじゃ帰れないよね…。
仕方なくトボトボと言われた部屋に向かい、ドアを開けたら…。
「…ゲッ…何でアンタが…」
既に寛いでいる男。
野澤だった。
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