光る指先
第1章 弱みを握って
「……今は内緒です。とりあえずはセックスさせて欲しいというお願いじゃありませんよ」
「でも……どういう意味か分からないわ」
「じゃあ、明日教えますよ。また家に来てもいいですか?」
「本当に、その……セックスという意味じゃないのね」
「はい」
「……分かったわ。それなら明日、話を聞かせてくれる?」
「ええ、分かりました。ちなみに伴条さんってホラー映画とかよく観ます?」
「ううん。私、怖いのは苦手だから。でもどうして?」
「いえ、何でもないです。それじゃあ僕はこれで」
「あ、うん。今日はごめんね、遅い時間に引き止めちゃって」
「いいんですよ。じゃあ明日、午前中に来てもいいですか?」
「智之が会社に出てからなら。九時半くらいなら大丈夫だから携帯に連絡したほうがいい?」
「いえ、それなら連絡はいらないです。余裕を見て十時前におじゃまします」
「くれぐれも……お願いね」
「分かっていますよ。親にも伴条さんが幼馴染と不倫しているなんて言いませんから。近所で噂になったら新婚生活も終わりでしょうからね」
「…………」
こうして泰氏は伴条宅を出て、自分の家に戻った。
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