唄う鳥・嘆く竜(前編)
第1章 【 収穫祭 】 プロローグ
『 嘆きの竜が目覚める。鳥の唄に耳を傾けなさい 』
街が見えてきたのは、日がずいぶん高くなってからだった。
クラウスは立ち止まり、小高い丘の上から街を眺めた。
城壁がぐるりと囲んだ広い土地が目指す街、魔法都市ウィンドシティ。
中央に高い円柱を何本も連ねた城。
その城を囲むように、低い建物が建っている。
曲がりくねった道はまるで魔方陣のような奇妙な文様を描く。
歩く者だれもが迷路の中を歩く事を覚悟させる概観だった。
実際その効果もあるのだろう。
街の門の前には長い列が見える。
さまざまな格好をした人々や荷馬車、乗り合い馬車。
その列は延々と続いている。
クラウスは舌打ちする。
……前の祭りでは、いまごろ別嬪さんの奢りで肉の香草焼きを食べてたんだけどな。
出遅れた感を感じながら、山間から街に入る道を急いだ。
1