ワイバーンギフ
第1章 誕生前夜
-第2話むちゃ振り
私は、倒れた自転車を起こしてカバンから携帯を取り出した。
「先に俺を起こしてくれよ!」
「待って…電話が終わるまで」
-はい。能登島です
「秀彦おじさん?和代だけど…ちょっと来て欲しいんだけど…」
ーアァ待てよ。GPS位置確認した。近いな…5分33秒で到着する。トラブルか?カズ?
「かなりのトラブルだと思う」
-緊急性は?
「無いけど…」
-判った。切って待て
私は、もがいている彼を見ながら携帯を切った。
「おじさん呼んだから、起こすね」
車椅子と彼は重かった。
「いったい何なんだよ!」
怒っている彼の車椅子をしっかり抑えているのは大変だった。
「落ち着いて。自殺未遂は犯罪だよ!絶対ダメ。離さないからね」
「誰なんだよ?もういいからほっっとけよ!」
「私?能登島和代だよ!能登島優樹は弟だよ!あなたはぁ弟のヒーローだった……あきらめないキャプテンだった…元気だせ!前へ!前へ!あなたは叫んでた!だからほっとかない。ほっとかないよ!」
急に暴れていた車椅子が止まった。彼の横顔には涙の筋が光って見えた。
秀彦おじさんの仕事部屋であるワンボックスカーが寄せてきた。運転席からピットマンが顔を出す。
「ハーイ!カズヨ。アタラシイ カレシデスカ?」
「?…。違います!秀彦おじさんに降りてきてもらって!」
「オーカズヨ コワイデスネ~…ボス キイテノトオリ」
秀彦おじさんは、まぶしそうに降りて来た。
「で?トラブルはこの新しい彼氏か?」
くどいので黙殺させてもらって経緯(いきさつ)を話した。
「足の動かない彼を日本代表に……おもしろい」
「なんとかなる?お願い秀彦おじさん!」
彼はうなだれたままだ。
「つまり…ネット上にサッカークラブを創設する。それをプロにして、世界中に拡げて国際Aマッチを開催するって事か?」
よくわかってなかったが…うなづいて先を促した。
「そうそう!そんな感じ!」
「そういう物に、お金を出す人が居るとでも?」
私は絶句した。
でも…撤退(ひく)わけにはいかない。
「そこをなんとか考えてよ!」
秀彦おじさんはしばらく考えていた。
「独自に開発した技術がある。そいつを限定的に提供して、プロ化する手は有る。つまり…限られた人間しか出来ないのなら金銭を発生させられる。待ってろ」
秀彦おじさんは車から何か持って来た。
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