ワイバーンギフ
第1章 誕生前夜
「単なるウォークマン?」
イヤホン一体型の白いウォークマンだった。磁石で左右がくっついていて、コードがちょうどハートマークを描いている。
「ケースだけ使わせてもらった。中身は無線ラン中継機と、画像音声データに入れ替えて有る」
「へー無線ランって、どことつなぐの?」
「詳細をブッ飛ばして言うと…装着者の視覚野及び聴覚野領域…大脳だな…それとネット上のクラブとだ」
「そんな事して大丈夫なの?」
「動物実験では問題無い。モニタリング試験はまだだが、昔のSFみたいに、脳にコネクタやらスロットをつけて、ライン繋ぐよりは安全だ。ニューロマンサーやマトリックスとか知ってるだろ?」
「オンラインゲームと脳を直接やっちゃうわけ?」
「いや。この場合ゲームじゃない。ネット上にサッカークラブが有り、そこに有る体でサッカー選手として働くんだ」
「オンラインゲームとどう違うの?」
「コントローラーでプレイしない所だな。脳でネット上の自分を動かす。そして負荷は疲労として、現実の体にフィードバックされる。もっともケガや命に関わる部分はカットさせられる。ネット上の自分はケガや死に至る事も有る。つまり、オンラインゲームならコントローラー操作が上手い奴が勝つ。しかし、このネット上サッカーでは、脳のイメージ能力と心肺能力の高い奴が勝つ。そして足が無くても、目が見えなくても、寝たきりでも、サッカー選手になれる」
「それが有るの?ウォークマンの中に?」
私はワクワクした。
「まだだ。これから造る。いま話を聞いたばっかりだ。俺はハリー ポッターじゃぁない」
「凄い!今の全部、今考えたんだ」
「基本的な技術応用モデルが有るから、バリエーションは出てくる」
「それでっ!いつ頃クラブは出来るの?」
「モニタリング試験をパスして、安全が確認されて、厚生労働省と経済産業省の許可が出ればすぐだ」
「それはいつ頃?」
「まずモニタリング試験に1000万円。スポンサーを探すか、ニューグリップタイヤあたりに持ち込んで、共同開発するかだな…」
「それって、不可能って事…」
秀彦おじさんは笑って見せた。
「バーニー ヘンドリックスが言ってる。不可能ってのは、可能になるまでに時間が掛かると言う意味だとね」
「誰?有名な人?」
「テクニカラー タイムマシンの主人公さ。それはいいとして…」
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