上級クラスで頭打ちになった所有馬に、再度勝ち上がりのチャンスがめぐってくる降級制度は、
馬主や厩舎サイドにとっても重要視されているもの。
降級直前には、仮に勝ち上がったとしても降級のタイミングで元のクラスに再び戻されることから、
4歳馬に勝ち上がりへ向けた究極の仕上げを施す勝ち得戦や、
降級戦で勝たせるという方針の下、何ヶ月も前からクラス再編成のタイミングを
逆算した仕上げを施す勝負事情など、厩舎・馬主サイドが、少しでもいい成績を挙げ、
多くの賞金を稼ぎ、長く競走馬生活を続けることができるよう、
様々な工夫を凝らす時期でもある。
もともと、クラス移動を円滑に行うための改善策として、
JRAが関係者と協議した上で実施された制度だったが、
JRA側は廃止の理由として現状でも夏に降級馬が増えると高額条件のレースを組みにくいこと
やビギナーファンには分かりづらい制度であることを挙げているという。
ただ、ごく一部の大物馬主を除いた大半の馬主たちにとって、
降級制度の廃止は少なからず影響があるもので、
今後同制度の廃止をめぐって、馬主サイドから何らかの動きが起こる可能性も低くない。
この廃止案について、既に関係各者から疑問の声が挙がっており
ダービーまでに500万で勝ちあぐねている4歳馬は、勝ってもまた500万に出走できるから、
オーナーサイドや厩舎関係者も必死に勝利を目指す。
また、降級した馬は当然すぐに勝って、再び元のクラスを目指すことになるわけで、
春から夏にかけて降級に関わる馬の馬券を自信を持って買うこともある。
既に浸透している制度を、ちゃんとした説明もなしにやめますと言われても、
納得することは出来ないとは、あるオーナーブリーダーの声。
厩舎関係者も現時点では反対意見も多い。
ただ、廃止なら高額条件レースが増え、必然的に賞金の底上げに繋がる。
それは反対できないのではないか。今後は馬主連合会や調教師会と協議を重ねていくが、
廃止の方向で決着するのではないかと見通しを語っていたが、
やはり現段階では反対の声が根強い様子。
また、某馬主はこの話は馬主協会の反対で保留になっているはず。
まだ決まってもいないのに、なんでこんな記事がと、一部報道機関による報道に
疑問を呈していたという。
少し前には、今年から施行される12月28日開催についても、
JRA発表より先行してマスコミの報道があったが、
内部では降級制度廃止を前提とした何らかの動きがあるのは、まず間違いないだろう。
前述のオーナーブリーダーはこの制度を推し進めるような動きが本格化したなら、
馬主連合会として要求すべきことをしっかり提案して、完全に受け身になることのないよう、
声を上げていくことが重要。生産者という立場だけでなく、
ひとりのオーナーとして発言力のある人間になるべきと強調していたという。
もし、それでもこの制度の廃止が実施されるようであれば、
各馬のレース選択そのものが、これまでとは違うものになっていく可能性が高い。
例えば、完成度の高さを武器に、2歳の早い段階でオープンや重賞で賞金を加算した馬たちが、
年齢を重ねるごとに同年代の馬たちに追いつかれ、頭打ちになってしまった場合など、
降級を待つこと無く、早期の登録抹消や地方転出という道が選ばれることになるだろう。
同時に、2・3歳の重賞で加算した賞金がそのまま保持されることになるため、
条件戦から段階を踏んで勝ち上がった馬たちにとっては、
重賞出走へのボーダーラインが今よりも厳しくなりそう。
逆に言えば、重賞戦線で活躍している実力馬が、
降級による収得賞金半減によって除外されるケースも少なくなるため、
メリット・デメリット両方を孕んでいる。
早ければ、2018年の夏より降級制度が廃止される予定とのこと。
つまり、現2.3歳世代は、降級の恩恵を授かることができなくなる可能性もあるため、
その場合は、厩舎サイドのレース選択も徐々に変化していくことになる。
今年の夏は、降級馬や3歳馬のクラス再編成直後のヤリ話だけでなく、
降級制度廃止案に伴う厩舎サイドの内情も、さらなる儲け処へと加わることになるかもしれない。